表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
984/1586

11-35 雷獣一家の思い


大陸では天獄てんごくも地獄も大荒れ。天帝に対し『帝弟に譲位せよ』なんて声を上げるモノまで現れた。


ガス抜きが必要だと考え、生贄いけにえに選ばれたのが雷獣王一家。



王の留守を守っていた王妃は天命に背けず、家臣に王子を預けてから地に下りた。


弱い雷では地に下りる事は出来ない。だから『大暴れする』とか『人を害する』とか叫び、無理やり気分を上げて。



子の声を聞き振り返った母は思うように動けず、中つ国に落ちた。


王妃が叫んでいたのは明里あかりの上空、悪取あとりの糸が殺気や狂気を感知できるギリギリのトコロ。



最期の言葉が『坊や』でも、自動的にタプタプ袋へドボン。






いくさだ! やまとを滅ぼっ」


バタン。




背後からドンと倒され、物凄い力で押さえつけられた。


折れた肋骨がグサグサと内臓に突き刺さり、息が出来ない。起き上がろうとしてもダメなので顔を。なのに何かが頭を直撃し、頭蓋がグチャッと潰れた。


苦しい、痛い。


逃げようとするも思うように動かずチクチク、いやガブガブと何かに足を噛まれている。爪を立てられている。



何だ、何が起きた。どうなっているんだ!




「天帝、・・・・・・天帝?」


ユッサユッサ、ゴロン。




肩を揺らしてもピクリとも動かないので、思い切ってエイッと仰向あおむけにした特級妖怪。苦悶の表情を浮かべる天帝と目が合い、魂が抜けそうになる。


勇気を振り絞って口元に手を向け、息が無いのを確認。ゴクリとつばを飲み込み、恐る恐る首筋に触れた。




「しっ、死んでるぅぅ。」


腰を抜かし、叫ぶ。


「猫又の呪いだぁ。」


「七代 (たた)られるぅ。」


上級妖怪たち、大パニック。






慌てて近づき、八つの目をクワッと開いた白澤はくたくが驚愕する。一歩、また一歩さがって息を呑む。


ブルンと首を振り息を吐くと集まった、いや集められた皆に見せなければイケナイ。行動を起こさなければ多くの血が流れ、中国妖怪が絶滅し兼ねない。そうなってからでは遅いのだと思い直し、前を向く。






「皆、静まれ。呪いは呪いでも猫の呪いでは無い。見ろ、雷獣の呪いだ。」


人の姿に化けた白澤が右袖をブンと振り、見えないモノを見えるようにした。



現れたのは天帝のむくろを前足で押さえ、牙を剥く雷獣王。天帝の頭を右の前足で力いっぱい押さえ、吠える王妃。天帝の足をガジガジかじる、幼い王子の姿。



「雷獣王を捕らえ、妻子の死亡を伝えてから処刑。王妃と王子が死ぬよう仕向けたのも天帝。」


ザワッ。


「死にたくなければ『漢講和条約』を遵守せよ。」


前足で骸を押さえたまま、殺された雷獣一家が顔を上げた。揃ってギッと、皆を睨みつけている。






どんなににぶくても理解するだろう。


雷獣一家は天獄と地獄で生きる妖怪に怨恨を抱き、絶滅させる気でいると。戦争の道具に利用され、妻子を奪われ、見世物にされた是王の怒りは凄まじいと。



白澤は一家の思いを察して思いやり、代弁しているのだ。



戦争なんかめろ。言葉が使えるのだから話し合え。約束したなら守れ。


親より先に子を死なせるような、幼子おさなごを残して死なせるような、親に死なれた幼獣が光を失うような、そんな国にはするな! と。






「やまと中つ国の神、妖怪も戦争を望まない。うらやんでも奪うな。他を見下さず博愛せよ。私は天獄を離れ、諸国を漫遊する。忘れるな。いつでも、どこでも私の目が開いている事を。」



天獄に集められた妖怪だけでは無い。地獄の妖怪たちも一斉に平伏し、倭漢講和条約を遵守すると誓った。


が、守るのは講和条約ダケ。内戦なら良いと考えている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ