5-25 敵意
負けない、負けたくない。諦めない、諦めたくない。振り向かせる、コウを。コウに好かれたい。
勝てない? それでも、負けない。勝てない? それでも、諦めない。勝てない? それなら、消せばいい。どうやって・・・・・・。
認めさせるには、どうすれば。
私がツウより優れていること。それは、コウへの思い。そうよ、私なら幸せに出来る。
セイがいなくなったんだから、私を選ぶわ。だってツウより、私の方が美しいもの。
「ツウ。」
コウの声が聞こえる。
「ツウ。」
コウが笑っている。
「ツウ。」
コウが手を振っている。
なぜ、ツウなの。なぜ、私じゃないの。なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。
「ねえ、コウ。私を選んでよ。」
「嫌だ。放してくれ。」
「私の方が、整っていると思うでしょう。」
「思わない。」
「私の方が、美しいでしょう。」
気持ちが悪い。何だろう、このモヤモヤは。そもそも、オレが好きなのはツウだ。他の子となんて、考えられない。どう言えば分かってもらえるんだろう。
「ねえ、私を選んでよ。」
「・・・・・・。ヒサ、聞いてくれ。」
「やっと分かってくれた。」
「喜ぶな! よく、聞いてくれ。オレが好きなのはツウ。大人になったら、ツウと契る。」
「コウはね、私と」
「何度も同じこと、言わせないでくれ。」
「私の方が美しいし、整っている。だから」
「オレは、ツウの姿、形に惚れたんじゃない。ツウに惚れたんだ。見た目で決めたんじゃない。」
「騙されている。目を覚まして、コウ。」
「・・・・・・ヒサ。」
「なに。」
「祝に診てもらえ。」
「ツウ、行こう。」
「さ、触らないで。」
ヒサはツウを押しのけた。倒れそうになったが、コウが抱きとめたので、何ともなかった。
「何をする。」
怒りを抑えられず、睨みつける。そんなコウを見て、ウットリするヒサ。明らかに壊れている。




