11-30 御猫さまは執念深い
迷惑な話ですが、『仮想敵』認定されてしまいました。
天獄および地獄では徹底した反倭教育が施され、軍の再編に訓練強化。加えて増税増税、大増税。
天獄でも地獄でも上がりに上がった税金を払えず、妖怪による犯罪が地上で増加。地上は地上で戦争ばかり。
夏だ殷だ西周だ。東周、春秋戦国時代が終わったら泰。前漢に入っても戦争、戦争また戦争。何回、滅亡してるんだ?
まぁ黄河文明まで遡りますから、当然といえば当然なのでしょう。けれど戦争を呪う詩、多過ぎませんか。
漢代の詩で重要な位置を占める『古楽府』の中にも残されています。
もともと楽府とは音楽の役所という意味で、この役所で集められた歌を後に楽府と呼ぶようになったトカ。楽譜の方は滅んで、歌詞だけが残されています。
専門外なので詳しくは知りませんが知る限り、強烈ですよ。
「来るな、近寄るなぁぁ。」
ガリッガリに瘦せ細り、歩けなくなった天獄の高級役人たち。寝台に横たわり、何かを払うような動作を繰り返す。
その目は濁り、何も見えないハズなのに。
「ギャァァ。」
骨が浮き出て、今にもポキンと折れそうな地獄の高級役人たち。ギョロギョロした目で辺りを見回す。
何もない空間に怯え、ガタガタ震える様は異様としか言いようがない。
大陸の天獄と地獄で起きている、奇妙な症状。
発症時期と場所は異なるが、何れも軍部に所属する妖怪。『倭漢講和条約』を改正するのではナク、破棄しようとアレコレ遣らかした悪者である。
「呪いだ。猫又の呪いだ!」
ナニ言ってんの、大丈夫?
猫又は尾が二つに分かれ、人を害するといわれる怪獣。因みに流は天寿を全うする前に人に嬲られ、生涯を終えると同時に妖怪化した猫の大妖怪。
ソレは扨置き、『倭漢講和条約』の控えを熟読しましょう。
ハンムラビ法典の一部が記された巻物に『未来永劫、やまとに戦を仕掛けない』『講和に関する取り決めを破れば即、神の呪いと懲罰が与えられる』といった文言が、バッチリ明記されてマス。
戦争準備をした時点で呪いが発動、制裁を加えられるオッソロシイ代物だモン。逃げられません、死ぬまでは。
「猫を殺せば七代祟る。」
御猫さまは執念深い。って、あれ? 流は猫又だけど生きてるよ。勝手に殺さないで。
「御仏の慈悲に縋るより他、ナイとでも言うのか。」
仏様でも難しいでしょう。だって『目には目を、歯には歯を』のハンムラビ法典だよ。
「御布施を、御布施を包むのだ。」
地獄の沙汰も金次第?
「三施、全てをぉぉ。」
三施とは仏教用語で三種の布施。財施、法施、無畏施を表します。
財施は衣類・飲食・田宅・珍宝などを他に施す事。法施とは他人に仏法を説き聞かせる事。無畏施とは一切の衆生、生きとし生けるものに畏怖の念が無いようにさせる事。
「いや六波羅蜜をぉぉ。」
六波羅蜜とは仏教用語で、菩薩が修する六種の基本的な修行項目の事。布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧を表します。
「いや十波羅蜜をぉぉ。」
十波羅蜜とは仏教用語で、菩薩の十種の修行の事。六波羅蜜に方便・願・力・智の四波羅蜜を加えたものデス。
「ニャッニャッニャッ。」
金塊を乗せた大船が一隻、二隻、三隻、・・・・・・中略・・・・・・、八十八隻、八十九隻、九十隻。
「十隻、足りニャイ。」
一割、杵築大社に納めたからネ。