11-22 渋渋でも
去島で見つけた雷獣の骸を持って、急ぎ津久間社から大社へ向かおうとした流。長いオヒゲがピクン!
嫌ぁな感じが去島の方からビンビンする。
直ぐに津久間神の使わしめ、緑に獲物を託して向かった。
「去島の真中に黄泉平坂とは違う、狭くて細い道を見つけました。」
「ナッ、それは真か。」
「はい。私には塞げないので急ぎ明里、悪取社へ。」
コトがコトなので使わしめ、明を抱えて会牧社へ。会牧神に御会いしてから去島へ向かい為さった。
会牧神の使わしめ、アツは和邇の隠。悪取神、明、流を背に乗せても大丈夫。
去島に着くなり坂の口へ。
直ぐに『悪取の力』で塞がれ、島ごと御調べ遊ばす。『大祓の儀を執り行う』と仰り、島を丸ごと闇の力で覆い尽くされた。
明、アツ、流が去島を囲い、大祓の儀が執り行われる。除き去った汚れ、禍は悪取神の御力で清らになったのだが。
「大国主神。もう一度、自凝を御調べください。」
流は知っている。会牧神の使わしめ、緑から聞いたから。杵築大社で耳にしたアレコレを。
「ウゥム。」
なぜ自凝の事を知って居る。いや、ソレより今は。
「人の世の事は人の世で。」
「ハッ。」
低ぅい声で囁かれ、ビクン。
目の前には後ろ足をタシタシする稻羽と、鋭い爪を出してニャッと微笑む流の姿が・・・・・・。逃げられない。
「あトりのかミ」
ギロリ。
「は、明里ニ御坐スかラ。」
ジィィ。
「伊弉諾尊にィ、コホン。御頼ミ申シ上ゲ・・・・・・。」
大国主神が御目で助けを求め為さったのは素戔嗚尊の娘、須勢理毘売。
伊弉諾尊は天照大御神、月読尊、素戔嗚尊の父神で在らせられる。
「そうですか、そうですか。」
ニコニコして居なさるが、御目は鋭い。
「いナ羽。ツかイを頼メるか。」
御声コロコロ、コロリンコ。
去島よりもズッとズッと大きな自凝を、隈なく調べるのは難しい。出来ないワケではアリマセン。でもね、自凝は大きな島なの。
ソレがドウしたって?
お忘れですか。根の国と中つ国の境、千引の岩を挟んで申し述べられた言の葉を。その後の事を。
阿波岐原の禊で、悪しき神として漂い出したのが、八十禍津日神、大禍津日神。
禊の終わりに両の目と鼻を洗い浄められ、現れ出られたのが天照大御神、月読尊、素戔嗚尊の三柱。
何が何だかサッパリ? ではハッキリ申し上げます。
伊弉諾尊は、それまで生まれた神には無反応だったのに、貴い三柱の誕生には大喜び。禍津日神が非行に走る原因になったのデス。
海を漂いながらも愛を求め、自凝に上がり為さった神神。その御心は乱れに乱れ、未だ苦しみ為さって御出でなのですよ。
『神サマ足りないから助けて』『うん、良いヨ』とはナリマセン。
「仰せの通りに致します。」
イヤイヤながら、渋り渋り承知しました。
「けれどハッキリさせてください。先触れに参りますが、御頼み申し上げるのは。」
「わ、分かって居る。」
アヤシイ。
「神在団子を持って、伊弉諾社に伺う。伺います。」