表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
968/1587

11-19 『良かった』とは言えない


渦風神うずかぜのかみは山神で在らせられるが、神成かみなり山の統べる地は海に面している。


中の東国ひがしくにで山奥に在るのは霧雲山の統べる地、おそれ山の統べる地の二つ。他は海からアレコレ、いろいろもたらされるのだ。






「渦風神。私、去島さるしまを調べて参ります。」


「流。おにとき和山社なぎやまのやしろ、人の世は杵築大社きづきのおおやしろが動いた。悪取神あとりのかみ大貝社おおかいのやしろを通して隠の世に。となると?」


「攻めて来たのは大陸おおおかの妖怪、舟が現れたのは去島から。人の世を調べるのだから、先ずは大社へ。」


「その通り。」






・・・・・・嘘だと言って。


やっと隠の世が開いたのに、悪取神が人の世に留まり為さる事になったのに、和山社から御許しが得られたのにナゼ、次から次へと揉め事が起こるのだ。



大陸から妖怪が攻めてくる。瓢からイロイロ知らされるが、死ぬ気で戦うつわものを食い止められるホド強くない。


となると、頼みの綱は明里あかり




「困った。」


大国主神おおくにぬしのかみが頭を抱え為さる。




明里が在るのは大貝山の統べる地。津久間の統べる地で御力をふるわれた事もあるが、同じ中の東国。


真中まなか七国ななくにから押し寄せる妖怪や合いの子を退しりぞけ、いやぎ払うために向かわれたダケ。



中の東国を守るためになら御力を揮われるだろうが、しづめ西国にしくにや中の西国を守るために明里を離れる、とは思えない。


大陸のヨォジュツやキンジュツを使って、去島からドッと攻めてくるカモしれないのだから。




「罠だけ、ナンテのも難しかろうな。」


いつ去島からドッと湧いて出てもオカシクない。


加津や近海おうみなど、入海いりうみにある国はドコも戦に備え、アレコレしているハズだ。闇の力を授かったからとノンビリ構えたり、明里を離れようと考え為さらないだろう。






「急ぎ申し上げます。自凝おのころの北から舟が飛び出し、南国みなのくに稜見いつみと真中の保国たもつくにに攻め込みました。大陸の妖怪と思われます。」


飛び込んできた使い兎が平伏した。


「続けよ。」


「ハッ。南国は守りを固めていた事もあり、直ぐに蹴散らしました。けれど真中の七国はいくさ、戦で乱れております。」



数多あまたの神が御隠れ遊ばし、穴だらけ。隠の世は人の世に手出しシナイ。となると、当たり前のように闇が噴き出す。



「そうか。で、どうなった。」


早貝さかいで殺し合っていた兵が手をたずさえ、妖怪と戦い始めました。力では負けますが毒と知らずに飲んだ水で、妖怪がバタバタ死んでおります。」



使用されたのは『耶万の夢』と『松毒もどき』。どちらも猛毒、強い妖怪でも口から泡を吹く。


非力な人が妖怪に勝てるワケが無いのだが、泉や川に投げ込んだ毒により形勢逆転。



「フゥゥ。」


『良かった』とは言えない。






「申し上げます。去島で見つかった『仕掛け』が、津久間社つくまのやしろより届けられました。」


使い兎がススッと、緑から預かった包みを差し出す。


「ホウ。」


もう動かれたのかって、エッ!



先の事なんて分からない。けれど言い切れる。コレ、夢に出るね。うなされるね、きっと。


クワッと開かれた目、苦しそうに歪む口。腹から喉の辺りまで引き裂かれ、肉が焦げている。



「大陸の舟が大きすぎて傷が広がり、擦れて熱を持ったのでしょう。」


そう言うと稻羽いなばが、雷獣の目をソッと閉じた。


「自凝を調べ、『仕掛け』を見つけて取り除くよう伝えよ。」


「ハッ。」


稻羽がこうべを垂れ、ピョンとつ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ