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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
967/1592

11-18 去島か


去島さるしまは火の山島の沖合にある小島。起伏は少なく植物が繁茂しているが、雷獣の腹を満たせるような動物は生息してイナイ。


樹木は多いので幾らでも裂けるが、それダケ。となると、サッサと諦めて空に戻るのでは?



もしウッカリ痛めたのが後ろ足なら、傷が癒えるまでとどまるだろう。


泉が無いので雨が降るまで乾きに苦しみ、動けないので狩れずに飢える。ボゥっとしながら空を見上げ、力を振り絞って吠えるハズ。


『助けて』と。






「去島から出られなくなった雷獣の叫びを、大陸おおおかから調べに来ていた妖怪が聞きつけた。飛べるのも居ますからね。水と食べ物を与えて島に閉じ込め、飼う事にしたのでしょう。掛け声か何かを発し、アッチとコッチの雷獣を掻っさばけば。フフフ。」


ながれ、とっても悪い顔。


「雷獣の大きさは犬と同じくらい。このように大きな舟、それも妖怪を乗せたまま通せるだろうか。」


悪取神あとりのかみおおせの通り。けれど掻っさあばいた雷獣を繋げ、大きな輪を作れば。」


ナッ、何と恐ろしい事を。


「入り口を大きくすれば、大きなモノを送れます。出る口が小さても、木か何かにくくりつけておけばポンと。」




去島は海に囲まれている。きわに生えている木に仕掛ければ、ザブンと勢い良く海面うみづらを滑るだろう。


そのまま贈灘ますなだを越え、入海いりうみに入れば松田まで直ぐ。




会牧神あまぎのかみに御頼みして去島を。その前に、津久間神つくまのかみに御話しせねば。」


「悪取神。これら全て、大陸の品で御座います。雷獣の毛が見つかった事でハッキリしました。私、社に戻って御伝えしようと思います。」


キリリ。


「そうですね。一度ひとたび、明里へ戻りましょう。」


「ハイ。」




悪取神は流を抱き上げ、静かに糸の上へ。そのままシュタタと高速移動。


丈夫だが不慣れだと綱渡り、じゃなくて糸渡りは難しい。ニャンコを抱っこしたかったワケではアリマセン。悪取神は愛狼家、ネコよりイヌが好き。



タッタと後を追うあけみはチョッピリ『羨ましいナ』と思いながら、黙って駆けマス。悪取社あとりのやしろに戻ったらナデナデ、よろしくお願いします。キュルン。






「ただいま戻りました。」


悪取社を通って渦風社うずかぜのやしろに戻った流、キリリ。


「おかえり、流。」


ナデなでナデなで、なぁでナデ。


「アッ、あの。」


お、溺れてしまう。ゴロゴロゴロゴロ、ハッ。


「渦風神、大事おおごとです。明里の国、松田に残されていた品。大陸のモノでした。それに、コレを御覧ください。」


「獣の毛だね。」


「はい。雷獣の毛で御座います。」


「雷獣。・・・・・・去島か。」


松田を目指すなら火の山島より、贈灘に浮かぶ去島だ。あの島には泉が無い。贈灘で海に落ち、流れ着いた人は居ろうが住み着かぬ。


「ハイ。去島の辺りからポンと、大陸の舟が現れたそうです。海社わだつみのやしろの使いおに和邇わにから聞き、社を通して悪取神に御知らせ為さったとか。」


「ホウ。」


海神が御力をふるわれたのではナク、大陸の妖怪が松田を目指したと。



狙いは悪取神か、明里に引き取られた合いの子か。


いや違う。海沿いにある浦辺でも加津でも無く松田に狙いを定めたのは、松田に闇を抱えた人や妖怪が隠れ住んでいると知っていたから。



松田の縄張りに隠の国、明里が建てられた事を知らぬのだ。


浦辺を外したのは舟が出ていたから。


加津の舟は浦辺ではナク、加津で漁をする。だから浦辺に人が住み着いたと、逃げずに暮らせる人が移り住んだと考えた。


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