11-15 ようこそ明里へ
隠の世が開くまでの間、人の世に建てる事を許された隠の国。
隠と人、人と妖怪の合いの子が暮らす明里は特別。というより悪取神の御力が凄すぎてコワイ。
人の頃から『滅びの力』を使い熟し、隠となって『獣の力』まで受け継いだ。
それダケでも凄いのに『悪取の力』まで使い熟すバケモノ、じゃなくて隠神で在らせられる元、御犬社の祝。
器が違うんだろうなぁ。
『悪取の力』には悪しきモノを奪う力と、悪しいモノを消して無くす力がある。隠神にしか扱えぬ特殊能力は諸刃の剣、僅かでも隙を見せれば闇堕ちする。
隠は何があっても隠だが、世界が大混乱するだろう。
「渦風神。明里へ行く事、御許しください。」
キュルン。
「嫌だ。」
プイッ。
「お願いします。」
お腹を見せるようにクネッ。ごろニャぁん♪
挑発的なポーズで神を悩殺する使わしめ。巧みな手捌きで愛撫し、使わしめをトロットロに蕩けさせ為さる国つ神。
どうしよう、十八禁だ。
詳しくは書けません。けれど社の奥から響く、甘い喘ぎ声・・・・・・。
溺れてしまわぬよう必死なのでしょう。『お嫁に行けニャイ』とか『もう耐えられニャイ』とか、イロイロ漏れ聞こえてきます。
日が暮れ、夜の帳が下りました。月が微笑み星が輝き、夜が明けても止みません。さすが猫又、体力あるなぁ。
「では、行って参ります。」
昼過ぎ、使わしめ流。若干フラフラしながら御挨拶。
「気を付けて。」
渦風神。ニャンコを心ゆくまで御モフり遊ばし、ツヤッツヤ。
「はい。」
神成山に在る渦風社から、明里に在る悪取社へ。
悪取社は壊された御犬社を、人の手により積み直され建てられた社。御隠れ遊ばした御犬様も隠犬さまも、犲の隠で在らせられた。
悪取神の使わしめ、明も犲の隠。
家族単位で行動する犲は、山中にある洞穴で生活する。悪取神は人の隠。加えて元、御犬社の祝。アレコレ為さらず、そのまま保って御出でだ。
つまり悪取社は大きくて暗いケド、風通しの良いワンコ好みの社です。
モチロン丁寧に御使いですヨ。社の横に生えている、柞の洞で御過ごし遊ばす事が多いけどネ。
「ごめんください。」
渦風神の使わしめ、流。慌てず騒がす、キチンと座って御声掛け。
「はい、ようこそ明里へ。」
悪取神の使わしめ明。シュタッと現れ、ニコリ。
明里は北に白い森、南に海。東に大磯川、西に椎の川が流れる広大な領地を持つ大国。その中央に位置するのが首都、明里。
住民の多くは隠で、人は海望や究玉などで暮らしている。
隠の世が閉ざされている間、人の世では暮らせない合いの子や人を積極的に受け入れた。
隠の世は開いたが『子と共に、明里で暮らしたい』と移住を希望する親子が社に殺到。松田に滅ぼされた里や村など、人が暮らす場所には困らないので、セッセと手を入れてマス。
「お久しぶりです、流さま。」
浦辺から急ぎ駆け付けたので、移住希望者と間違えました。テヘッ。
「お久しぶりです、明さま。」
ニコッ。
「大陸の妖怪が乗って来た舟やアレコレ、すべて松裏に御座います。私の背に御乗りください。」
「はい。ありがとうございます。」