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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
959/1585

11-10 そういうコトですか


悪取神あとりのかみはアサを御呼び遊ばし、おっしゃった。『直ぐに戻る』と。


明里あかりで初めに生まれた合いの子、アサには心の声が聞こえる。とても耳が良いホウと共に、明里の守りを担うシッカリ者。少しの間なら任せられる。



悪取社あとりのやしろから千砂社ちさのやしろ、千砂社から耶万社やまのやしろ、耶万社から大貝社おおかいのやしろへ。



千砂神ちさのかみ加津社かづのやしろ会岐社あきのやしろ大石社おおいしのやしろ耶万神やまのかみ殺社あやのやしろ大浦社おおうらのやしろ氛冶社ふやのやしろ宿儺社すくなのやしろに使いを出され、伝え為さった。『明里の地に大陸おおおかの妖怪が現れた』と。



大貝神おおかいのかみはフンと胸を張られ、伝声管ならぬ伝声糸で和山社なぎやまのやしろに報告。使わしめ土、涙目で拍手。


丸投げ為さらず御自ら、キチンと報告するという偉業? を成し遂げられたのだ。赤飯を炊いて祝いそうな勢いである。






「ナニッ。」


『木の枝ポーン広場』で愛犬マルコと戯れるめぐし子マルを見つめ、心の洗濯中だった大蛇神おろちのかみ。緊急連絡を受け、仕方なく和山社へ。で真っ青。


「申し上げます。悪取社より『大蛇神に御目通り願いたい』と」


「会おう、今すぐ。」


先触れです。謁見の申し込みですヨ、落ち着いて。




お土産に持って来たのは明里名物、干した浅蜊あさりはまぐりの詰め合わせ。悪取の糸で作った囲いの中で、砂を吐かせてシッカリ干したモノ。とっても美味おいしいヨ。


通された部屋でドキドキしながら、大蛇神を御待ち申し上げるあけみ。キチンと座って待ってマス。






シュルシュルシュルシュルゥ。


「話を聞こう!・・・・・・ん。」


お座りワンコ、キョトン。


「大貝山の統べる地、明里より参りました。悪取神の使わしめ、明で御座います。」


直ぐに頭を切り替え、キチンと御挨拶。


「明里より干し貝を御持ちしました。皆さまで御召上がりください。」


カンペキ!


「これは良い品だ。」


良村よいむらのマルは干した若布わかめ入りのかゆも好きだが、干し貝入りの粥が大好物。


「ありがとう。」



霧雲山の統べる地にある良山よいやまは、海から遠く離れている。


良村のセンもノリも舟の扱いが上手うまい。行きは川の流れに乗ってスイスイ、けれど帰りは流れに逆らって漕ぎ続けるのだ。とても疲れる。


なかなか口に出来ない干し貝を持ち帰ったら、きっと大喜びするだろう。



愛し子の喜ぶ顔を思い浮かべた大蛇神、それはそれは幸せそうに微笑み為さった。






「そういうコトですか。」


和山なぎやまから戻った明が呟く。



御目通りを願い、先触れに伺ったダケなのに『早いな』と思ったんです。贈り物が良くても『明くる日』は早過ぎますもの。


困りました。やっと落ち着いたのに、大陸のつわものが攻め込むなんて。


にしてもオカシイですね。遠くから来た事を差し引いても、兵の数が少ないように思います。これからもっと、もっと押し寄せるのでしょうか。



「明、人のときおにの世を行き来して疲れただろう。ユックリお休み。」


美味しい夕餉ゆうげを食べ、おなかイッパイ。微笑みながら肩を撫でられ、疲れも凝りも吹っ飛んだ。優しい御声に癒され、チョッピリ眠くなる。


「はい、悪取様。お休みなさい。」



ペコリと頭を下げ、悪取社の横にあるははそほらへスルリ。クワァっと欠伸あくびし、クルンと丸まって目を閉じる。


あっという間に夢の中。



石積みの社が嫌いなワケじゃない。ただ住み慣れた洞が、悪取の匂いがする洞の方が落ち着くダケ。


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