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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
957/1588

11-8 引っ越し、ですか?


霧雲山で別格とされるのは山守神やまもりのかみ御坐おわす山守、いただきを守る祝辺はふりべ、黄泉のかどを守る鎮野しづめの、水の全てを管理する大泉の四つ。


うち山守社やまもりのやしろ祝社はふりのやしろ鎮野社しづめののやしろは地上に在るが、大泉社おおいずみのやしろは水中のドコに在るのか不明。



泉の多い祝辺では頂と大泉が聖地、鎮野は霊境。


大蛇神おろちのかみ御坐おわ良山よいやま黒狐神くろきつねのかみが御坐す狐泉、永久中立を宣言している野呂のろ野比のびも別格扱い。


これらの地に山守が手を出せば直ぐ動き、祝辺のひとやに叩き落す。






「朝餉ですよ。」


囚われ人は獄内に備えつけられたかめで用を足す。けれど山守の祝は別。眠っている間に固定され、寝台の穴から垂れ流し。


ちょん切り台に円蓋えんがいを取り付け布を掛けているので、スウスウするケド見えまセン。



初日は水は飲めるが絶食、二日目からは野菜入りの汁粥しるがゆを食べさせてもらえる。頑固な詰まりが解消され、スキリすると大好評! なワケが無い。


「ンゴムゴゴォォ。」 ナワヲトケェ。


猿轡さるぐつわを解けば大騒ぎ、場合によっては大暴れするでしょう。ご注意ください。ピンポンパンポォン。


「もう六日むいかですよ。」


はふりとが溜息まじりに呟き、盆を置いて布を解く。


「聞け! 霧雲山に強い力を持つ娘が来る。」


「ハイハイ。」


「山守神は強いちかっ、ムグムグ。」


大きく口が開くのを待って、さじを突っ込む。


「強い力を持ついけぇっ、ムグムグ。」


グッと匙を突っ込む。


「生贄を御求めだぁっ、ムグムグ。」


ガンガン匙を突っ込む。


「その娘を捕らっ、ムグムグ。」


慣れた手つきで匙を突っ込む。


「捕らえ捧ぁっ、ムグムグ。」


ドンドン匙を突っ込む。


「捧げよぉっ、ムグムグ。」


空のうつわに匙を入れ、猿轡を噛ませる。スッと立ち上がり獄を出ると、扉を閉めてかんぬきを掛けた。






霧雲山に来るのは決まって、他では生きにくいか生きづらい人。祝辺の許し札を持った谷河の狩人、野比の木菟ずく、野呂の鷲の目が連れて来る。


谷河は従う。野比も野呂も祝辺に忍びを送り遣わすが、山守にも祝辺にも従わない。




「もし、いや。」


ウチの祝が言う『強い力』は、強い『祝の力』を持つ人を指す。そんな人が困っていたら、霧雲山ではナク釜戸山に連れて行くだろう。霧雲山から隠すハズ。


「いつものコトさ。」


獄に放り込まれると、三度みたび一度ひとたびは同じ事を言う。霧雲山に強い力を持つ『者』か『娘』が来ると。






おにとき和山社なぎやまのやしろ


さくの夜に開かれるはかりともちの日に開かれる議りで、ずっと閉ざされていた隠の世が開かれる事になった。


隠神も狭間はざまの守神も、そろそろ良いだろうと御考え遊ばしたのだ。



人の世はモチロン根の国、常世とこよの国、あまつ国にも知らされる。統べる神は大忙し。統べる地に余すトコロなく、良く知れ渡らせなければナラナイ。


人の国でも隠の国でも、妖怪の町であっても。






悪取あとり様。人の世を離れ隠の世へ・・・・・・引っ越し、ですか?」


悪取神あとりのかみの使わしめ、あけみが首をかしげた。


明里あかりの干し貝を持って、和山社へうかがおうと思ってね。要る物を整え、備えているんだ。」


大蛇神から御許しいただいたのは人の世に留まる間、この地で隠を助け導く事。国を建てる事。


明里には人も暮らしている。隠の世が開いたからと、建てた国をドウコウせよとはおっしゃるまい。



明里王あかりのきみは私だが、国長くにおさ大臣おおおみも狩頭も、海頭も子頭も人。私たちが居なくなっても暮らせるだろう。



もし叶うなら隠も妖怪も今まで通り、明里の国で。


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