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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
955/1588

11-6 もうイヤ


鎮野社(しづめのやしろ)には樹齢ウン万年と言われる御神木があり、鎮野しづめので生まれた嬰児みどりごに木、風、声の力を授ける。


木の力を授けられた子は『木の子』、風の力を授けられた子は『風の子』、心の声を聞く力を授けられた子は『声の子』と呼ばれ、将来の幹部候補生として育てられる決まりだ。



御神木に選ばれた子は例外なく、通いの継ぐ子。住み込みの継ぐ子は他から逃げてきた、祝の力を生まれ持つ子。


どちらも鎮野社の継ぐ子、教官は違うが扱いは同じ。木の子は社の司、風の子は禰宜ねぎ、声の子は祝。他の継ぐ子は祝人頭はふりとがしら祝女頭はふりめがしらにつく。






「困りましたね。」


鎮野の社の司が呟く。


「山守ですか。」


禰宜が尋ねた。


「はい。釜戸の裁きが気に入らず、奪おうと考えているようです。親元に戻れず、育つまで預けられた子を。」


「ハァァ。」






釜戸のくわだてにより散らばったが、北山が集め産ませた子が育ち、そろそろ託されるハズ。釜戸は雲井では無く、他に預けたから幾らでも奪える。


動くなら今だ!


野比のび野呂のろの動きをさぐれ。」


山守の祝が継ぐ子を呼び出し、命じた。


「は?」


いやイヤ、忍びにはかないません。野比には木菟ずく、野呂には鷲の目が居るんですよ。


「行け。」


「祝。知りたい事、狙いは何ですか。」


社の司や禰宜にシッカリお伝え出来るよう、聞き出せるダケ聞き出さなきゃ。



『山守神は祝の力を生まれ持つ、強い生贄いけにえを御求めだ』なんてコトを信じて疑わないウチの祝は、言い出したら聞かない。


動き出したら止まらない困ったヤツ。じゃなくて、困った人だから。



「霧雲山の統べる地に隠された子が育ち、野呂か野比を通して鎮野に入る。ソレを奪うのだ。」


・・・・・・ソウデスカ。アハハ、ソウキタカ。






霧雲山を統べ為さるのは山守神やまもりのかみ、御山のいただきを守るのは祝辺はふりべの守。


山守と祝辺は対対たいたいだが、いづれも黄泉平坂よもつひらさかを守る鎮野には手を出せない。よって山守や祝辺から守りたい人、物を託すには打って付け。


けれど鎮野に頼るのは最終手段。



最初に頼るなら霧雲山の村で唯一山守に関わらないと宣言し、木菟ずくを派遣し祝辺を監視中。不気味なほど強く、永久中立を謳う野比社のびのやしろ


しくは獣のように強いが人を助け、霧雲山の村で唯一祝辺に人を送らないと宣言! 永久中立を謳う野呂社のろのやしろ






「お断りします。」


継ぐ子に断られ、見開く。


「祝に、山守の祝に逆らうのか!」


「はい。」


素気すげ無く断られ、顔を赤らめる。オッと危ない、いろんな物が飛んできた。落ち着け祝、相手は子だ。


めなさい!」


社の司が祝を羽交い絞めにし、禰宜が継ぐ子を逃がす。


「放せ、おホォンムグ。」


禰宜に猿轡さるぐつわを噛まされ、頭をブンブン。抵抗虚しくキツク結ばれ、手足まで縛られた。


ひとやに運びましょう。」


「はい。」



縛った手足におうごを通し、それぞれ肩に担ぐ。そのままエッサと獄まで行き、着くなりポイと放り込んだ。


直ぐ扉を閉ざし、かんぬきを掛ける。



「釜戸は人、雲井は妖怪を裁く社。釜戸山と乱雲山が動けば天霧山が動き、和山なぎやまの頂に届くでしょう。そうなれば、分かりますね。」


ギッと睨みつける祝。


社の司も禰宜も涼しい顔をしているが、心の中では『もうイヤ』と大騒ぎ。


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