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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
山守編
952/1635

11-3 どうせ外れる


両の手足を縛られ、猿轡さるぐつわめたままひとやに放り込まれた。


芋虫状態にもかかわらずジッタンバッタン。ムクッと起き上がり正座したと思ったら、頭をガンガン振ってグゥラグラ。横にドタンと倒れ失神。






「祝がオカシクなりました!」


獄の見張りをしていた継ぐ子が社に駆け込み、アワアワする。けれど『いつものコトさ』としか思わない。


山守の祝は皆、祝になるとオカシクなるから。


「さぁ、水をお飲み。落ち着くよ。」


禰宜ねぎからつきを受け取り、トクトク注がれた水をゴクリ。フゥ、美味おいしかった。じゃない!


「祝が木から落ちたせみのように、ひっくり返りました。」


ジジッ。


「鼻に手を当てたら息が。だから生きてます、生きてました。」


「そうか、わかった。ありがとう。」


社の司が継ぐ子の頭を撫で、ニコリ。






賑やかなのは離れダケでは無い。社も同じ。


「ねぇ、どうして。」


継ぐ子だった時にはシッカリ見えていたし、ちゃんと聞こえていた。なのに祝になると見えず、聞こえず。


「長らく人のときに居りますが・・・・・・。」


なぜウチの祝はかんなぎでも無いのに、女も男も神降ろしするのだ。まことなら何も言わぬが全て偽り。多くの命が奪われ、祝辺へ。


「サッパリ分かりません。」



呪いなら解くしかナイと山守神やまもりのかみ大泉神おおいずみのかみ鎮野神しづめのかみの三柱で清めの儀が執り行われた。が、何も変わらない。


思い切って大蛇神おろちのかみに御頼みし、山守を隈なく御調べいただく。すると『呪われているのは祝だけで、継ぐ子は清らだ』と判った。



叢闇むらやみの品といい山守祝の呪いといい、人の世は恐ろしい。」


流し目で溜息をく姿が悩ましい九尾の白狐、シズエは山守神の使わしめ。山守神は女神。『ガオォ』と、は・・・・・・なりませんね。


「怖い事を言わないで。」


衣を被られ、ウルウル。


「山守神。思い切って、悪取神あとりのかみに御頼みしては。」


「・・・・・・したわ、一九社で。」



神議かむはかり@出雲、最終日。酒より甘いモノが御好きらしいと加津神かづのかみうかがい、神在団子を手に御挨拶。


神歴は浅いが元、御犬社おいぬのやしろの祝。闇の中でも扱いが難しいと言われる『悪取の力』を授かり、『獣の力』と『滅びの力』も受け継いだおに


慎重に計画を練り、御頼みしました。



「断られてしまった、のですね。」






悪取神は隠の国、明里王あかりのきみでも在らせられる。神議りの間は隠の世が御守りくださるが、終わればオシマイ。寄り道せず、真っ直ぐ明里あかりに戻ります。


それに今、人の世は大海賊時代! じゃなくて農地や水源、食糧を巡って集落同士が争うオソロシイ時代。


アレコレ張り巡らせていても長く空けるのは難しい、というより離れられない。



社の横に転がして、悪取社あとりのやしろへシズエを派遣。そのうえで明里から山守に御呼びする、という手も有るには有るがムリ。理由は上記の通り。


幾ら九尾の妖狐でも、対象を保護するか処分するか、瞬時に判断できません。纏めて消し炭にするでしょう。



なら祝が霧雲山を出れば良い、と思いますよね。ダメなんです。


オカシクなっても、見えるハズの御姿が見えず、聞こえるハズの御声が聞こえなくても祝は祝。霧雲山から出せません。



良いじゃん? 良くナイよ。


隠の世を通れないのだから人の世。霧雲山の統べる地から大貝山の統べる地へ、あの祝を舟で運べる人なんて良村よいむらのノリかセンくらい。


もし何かあれば大蛇神のめぐし子、マルが悲しむ。マルが悲しめば、ブルル。考えたダケで恐ろしい。






「隠の世が開いたら、と。」


「それは良う御座いました。」


としか言えまセン。トホホ。


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