5-22 早稲の現状
早稲へ使いが出された。そしてすぐ、受け入れが決まった。
「セイ、早稲から受け入れると、知らせが」
「キャアァァァ! 行くわ。」
セイは知らなかった。早稲が、どうなっているのか。
「へぇ、妹がいたんだ。驚かないけど。」
「姪かもよ。」
「構わないさ。十二なら、使える。」
三鶴と玉置に攻められ、早稲の村は荒れ果てた。田も畑も荒らされ、家も焼かれ、すべて奪われた。
家も食べ物もない。生き残った村人は、「早稲の他所の」人が残した家で、細々と暮らす。
早稲の村に残ったのは、年寄りと幼子。いち早く逃げた、長の倅たち。何を考えているか分からないヌエ。人たらしのヒト。ジンより厄介な二人組。
「にしても、シンのヤツ。裏切りやがって。」
「あの恩知らず。」
「それに、何だよ。アイツら。」
「捨て置かれたくせに、後を追うだぁ?」
「追い返されるに決まってる。」
シゲたちが去った後、何人か戻った「早稲の他所の」人たち。早稲の、社の司に託された品を見て、一人を除き、後を追った。
「アレ、何なんだ?」
「よそ者の考えることなんて、知るかよ。」
同じ母から生まれたのに、シンとは大違い。祖母、フウが生きていれば、叱ってもらえただろうに。
生き残った早稲の村人たちは思った。他所の人たちに、良くしておけばよかったと。
「オイ、狩ってきたぞ。」
早稲に残った、唯一人の他所の人、カツ。狩りは上手いが、タツと同じくらい歪んでいる。怒らせると、手が付けなれない。
なぜか、早稲の村を、とても気に入っている。
「お、イノシシか。」
「あぁ、大物だ。」
「オイ、手伝え。」
フラフラと家から出て来た村人たち。食べ物を捕ってくるカツを、崇めていた。
「カツ、もうすぐ娘が来るぞ。」
「いくつだ。」
「十二。」
「肉付きは良いのか。」
「さぁ、知らない。乱雲山から来る。」
「オレがもらう。」
「好きにしろ。」
セイは忘れていた。早稲が、どういう村なのかを。




