10-73 酷い話
ハハッ。耶万神の御考えを伺っていたから、驚きはしないよ。
松田に滅ぼされ、荒れていた地を整えた。どれくらい来るのか分からないが、人を食らわない合いの子なら多く無いハズ。が! それはソレ。
「解りました。けれど一つ、宜しいでしょうか。」
ききっ、キタァ! そうですよね。イキナリじゃ困りますよね、分かります。良く解ります。私だって、ウウッ。
「明里は新しい国。津久間の統べる地から多く受け入れましたが、食べ物もシッカリいただきました。アチコチから押し寄せる合いの子を養えるホド、豊かではアリマセンので。」
ですよねぇ。
「人を食らわない合いの子に、食べ物を持たせてから送るよう伝えます。」
キリッ。
「よろしくお願いします。」
ニコッ。
そうキタか、まぁ良かろう。
「解った。そのように伝えよ。」
大国主神。合いの子を送る社に、杵築大社も含まれますヨ。ワザワザ御伝えしませんが、もしかして?
「はい。」
スススと下がり稻羽、急ぎ使い兎を集める。使い兎たち、お鼻ピクピク。『合いの子狩り』が行われている地に御坐す、神の御元へピョン。
統べる地の神より大社からの告げ知らせが広まり、数多の神がホッと為さる。アチコチでポンポン生まれ、人を食らう合いの子が増えていたから。
人を食らわない、人の味を知らない合いの子なら受け入れてもらえる。
生きていれば親も共に、明里の地を踏めるのだ。ギリギリまで追い込まれていた親子は荷を纏め、社を目指す。
「はい、並んで。」
社憑きが人に姿を見せ、離れに誘い導く。使わしめが合いの子をシッカリ調べ、妖怪の国守が確かめる。一口でも人を食らった子は捕らえ、獄へ。
落ち着いたら、気の毒だが死んでもらう。
神の御調べを受けられるのは、人を食らわない合いの子だけ。
親や縁の者など、合いの子と共に明里へ行くと決めた者を社の司、禰宜、祝がジックリ調べた。
譬え血の繋がりが無くても、合いの子の親なら明里へ。けれど親も子も人なら、諦めてもらうより他ない。
「この度、受け入れられるのは合いの子です。人の子は・・・・・・。」
『合いの子狩り』に遭うのは、合いの子だけでは無い。嫌がらせに腹癒せ、口減らしのため追い出したり、殺したりするのだ。
親無しが一人で生きるのは難しい。狩りや釣りが上手ければ生きられるが、多くは野垂れ死ぬ。
「そう、ですか。」
目の前にギリギリの人が居る。このまま放り出せば、きっと死んでしまう。声を掛けたのは社憑きや使い隠など、神に仕える隠や妖怪たち。
『噂を聞いて』トカでは無く、間違って声を掛けられた。なのに『人だから』と、『合いの子じゃ無いから』と追い返す?
「この子だけでも、お願いできませんか。」
死ぬ気だ。
「・・・・・・私には決められません。並んでいる人を調べ終わるまで、話し合えないんです。待てますか。」
明里は隠の国だが、人も暮らしている。多くの里や国を滅ぼし続けた松田の縄張りを、ソックリそのまま治めているとも聞いた。きっと広い。
「待ちます。」
酷い話だ。鎮の西国も中の西国も、海の向こうからイロイロ仕入れて豊かだと聞いたが違うのか?
御犬様から伺ったのだ、昔は豊かだったのだろう。あれから幾年経ったか分からないが、いや違う歪んだ。心も魂も全て。
「瓜里を整え、受け入れよう。」