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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
943/1586

10-71 振り返らずとも


人を襲わない、食わらない合いの子に限り受け入れる。


親無しはやしろを通って、親と移り住む者は舟で明里あかりへ。どれだけ来るか分からないが、海望うもち切岸きりぎしだけでは難しかろう。


急ぎ鞣里なめざとを整える。他に谷望たにもち翔山かけやま究玉さたまも。何れも川で行き来できるし、松川から海に出られる。



松田と松裏まつうらは今のまま、悪いのを誘き寄せたりひとやとして残す。受け入れた合いの子や人が悪さすれば、松裏に流れるよう仕掛けよう。


疑うワケでは無いが、中の西国にしくに真中まなか七国ななくにから来るのだ。万が一に備えねば。






「テイッ。」


中の西国や真中の七国で『合いの子狩り』が行われていると知り、多くの者が心を痛めた。合いの子を引き取り、育てている妖怪は特に。


取り上げた子が皆、大きくなったワケでは無い。腹を食い破ったり母を食らったり、人の味を覚えてしまった合いの子は殺すしかなかった。


母も子も救えなかった事、今でも忘れられずにいる。


「トリャッ。」


明里はおにの国。隠、人、合いの子が仲良く暮らしている。狩りに釣り、山の手入れやはた織りなど、いろんな事を教わりながら。



悪取社あとりのやしろがある明里から張り巡らされた糸は、人を食らおうとする獣や悪いのを捕らえてくれる。だからキノコや木の実を採りに山に入っても襲われない。


合いの子や大人が付き添い、目を光らせるケドね。


「一休みするか。」


親無しは悪取社に引き取られ、離れで暮らしている。


元は松田に滅ぼされた隠れ里。荒れていたが田も畑も、手を入れれば使えるようになった。だから同じように浦辺、海望、切岸も皆で力を合わせ、整えたのだ。



松川を上れば着く鞣里は悪取神あとりのかみと使わしめ、あけみにより整えられた。だからドッと来ても受け入れられる。


明里の国長くにおさカハ、大臣おおおみヒシ。狩頭ユウ、海頭メイ、子頭ウミの五人は大忙し。アサ、ハヤ、チカが合いの子を纏め、シッカリ支えている。


「こんなモンかな。」


うね、悦、大野、光江、安の生き残りは思い知る。耶万やまに背けば片付けられると。


長が耶万に裁かれた事が広く知られ、他も大人しくなった。暫くはいくさを仕掛けよう、他に攻め込もうナド考えない・・・・・・ハズ。



大貝山の統べる地では合いの子はモチロン、人狩りなど行われていない。そんな事をすれば? 闇の種を植えられマス。


逆さ吊りでポイ、タプタプ袋にドボンかも。






大国主神おおくにぬしのかみ。どうか御考えを」


「いや決めた。悪取神を国つ神と認め、広く知らしめる。秋の神議かむはかりにも御呼びするぞ。」


「それは良い御考えだと思います。けれど」


「そうだろう、そうだろう。でだ。ひょうと明里を結ばせ、共に力をふるうよう強く、強く請い求める。」


ソレ難しいから。お願い、兎のカンを信じて。


「そうそう稻羽いなば。妻問いするから、良い娘がぁ?」


振り返らずともワカリマス。須勢理毘売すせりびめですね、御怒りですね。


「では、これにて。」


ピョン。


「待て稻羽。・・・・・・いや、これはソノ。」


「明里とは、どのような娘なのですか。」


御犬社おいぬのやしろの元、祝です。人だった時の名が明里、隠の名は悪取。使わしめ明のひらめきにより、里の名になりました。


娘でも女神でもアリマセン。


「さぁ。でドド、どの辺りから。」


冷や汗ドッバァ。


「『明里を結ばせ、共に』からですわ。」


オホホ。


「明里ハ隠の国デス。悪取神ハ隠デ、合いノ子狩りデ苦しム者ヲ受け入れルと。」


「それは良い御考えですね。」


「ヒャイ。」


恐妻家、背筋ピーン。


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