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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
941/1586

10-69 既に手遅れ


杵築大社きづきのおおやしろにて大国主神おおくにぬしのかみ耶万神やまのかみの使わしめ、マノから告げ知らせにビックリ為さる。



「それはまことか。」


「はい。おにの国である明里あかりに押し寄せたつわものから、人ならざるモノの闇が見つかりました。悪取神あとりのかみが捕らえ為さった兵を耶万社やまのやしろで引き取りましたが、それはそれは禍禍まがまがしい闇で。直ぐに切り取り、水引社みずひきのやしろへ。」


白いひとやに入れられている間は悪取の力で清められていたが、ユイが触れて消えたらブワッと溢れ出したのだ。裁くために集まっていた皆、揃ってビックリ。


人ならざるモノの闇を抱えていたのは、加津に仕掛けた兵も同じ。


闇堕ちスレスレの軍神いくさがみが舟に憑くか、潜んでいなさったのだ。沖で海に落とされた兵と共に、隠の和邇わににより海社わだつみのやしろへ。


真中まなか七国ななくに御坐おわ数多あまたの神神が、闇に魅せられたと思われます。悪しきモノを奪う『悪取の力』を御持ちなのは、人のときに一柱。」


ゴクリ。


「人の世に隠の国を建てる許しを大蛇神おろちのかみより、神に御為り遊ばす前にいただいた国つ神で在らせられる悪取神。やまいぬの里は千砂ちさ、浦辺は加津との繋がりが有り、明里は腰麻こしまと結びました。」


先の神議かむはかり、悪取神は御呼ばれサレズ。


やまとに御坐す全ての国つ神がつどいましてはかられるワケではナイ。けれど大蛇神、はじまりの隠神が御認め遊ばした隠を仲間外れにシタとあっては・・・・・・。


頭、真っ白。血の気サァッ。どどっ、どうしよう。



『人の世の事は人の世で、隠の世の事は隠の世で』が大蛇神の御考え。とはいえ、アレレ。人の世に隠の国を建てる許しを、なぜ隠神で在らせられる大蛇神が。


イヤイヤ待て待て。悪取神は神に御為り遊ばす前に隠の国を、明里を建て為さったのだ。何の障りも無い、よね。


「耶万はいづれ、明里と結びます。社を通して行き来しておりますので、そう難しい事ではアリマセン。」


ヒョエッ!


「おニの国か、はハは。」


大国主神。御目を泳がせ、カクカク。


「オろチの神ガお認めアそばシタのだ。人のトキにオニの国、良いデハなイか。」


御声をコロコロ転がし為さり、ニゴッと福笑い状態。






悪取神は人に望まれ、国つ神と御為り遊ばす。


犲の里は松田に滅ぼされ、松田は耶万に滅ぼされた。松田は大貝山の統べる地の端近くに在った国で、その縄張りは白い森と海、大磯川と椎の川に挟まれている。



明里は松田の縄張りだった、全ての地を任された。


明里王あかりのきみ悪取あとり、人だった時は御犬社おいぬのやしろの祝。闇堕ちするも大貝神の代替わりに力を尽くした事により清められ、里に戻され悪取となった。


『悪取の力』に加えて、里の者が死に絶えた事により消えたハズの『滅びの力』と『獣の力』を授かったのだ。治めの隠として隠の世に迎えられてもオカシク無い。


そんな神が人の世に、隠の国の王として残られ、いや御坐す。



明里は大貝山の統べる地にあり、耶万に組み込まれたのでは無く、付き合いがある国。暮らすのは隠、人、合いの子。


人と妖怪から生まれた合いの子が、人と交わり子をなした。それが新たな合いの子。人の世では生き難い、暮らし難い子を引き取って育て為さるとは!






「そうだ、引き込もう。しづめの西国には妖怪が暮らすひょう。中の東国には、隠の国である明里が在る。二つを結ばせ、中の西国と真中の七国のアレコレを片付けさせれば良い。うんうん、良い考えだ。」


「大国主神。悪巧わるだくみが全て、御口に。」


稻羽いなば、急ぎ明里へ。瓢と結ぶよう、にっ。」


ジィっとマノに見つめられている事に御気付き遊ばし、アワアワ。冷や汗ドッバァ。


「ドコまで聞いた。」


「『そうだ、引き込もう』から『うんうん、良い考えだ』までで御座います。」


既に手遅れ。


「そノ、聞かナかった事ニ。」


なりません。


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