5-21 出生の秘密②
知らなかった。私は、父さんの子じゃなかった。そうか。だから、思い通りにならなかったんだ。長か、倅の子ってことは。ウフフ。
セイは暴れるのを止めた。早稲に帰れば、長の子か、孫として生きられる。そうすれば、コウと幸せになれる。私は、選ばれた娘。合ってたじゃない。
「ゴロゴロさま。セイが早稲の子というのは、違い、ないのですか。」
「違いない。妖怪の力を侮るな。」
「侮るなど。」
「フンッ、分かっておる。気に病むな。」
「セイの母は、沼田に逃げ込んだ。村は滅んだが、沼の主は生きておる。その主が言ったのだ。早稲から逃げて来た娘は、身籠っていた。生まれたのは女で、名をセイ。村の男が、己の子として育てたと。」
「では、セイは。」
「早稲の子だ。」
セイは、晴れ晴れとしていた。何もかもが輝いて見えた。やっと、思い通りになる。
朝餉の器を下げにきた、祝人に言った。
「祝に話があります。会わせなさい。」
雲井社でセイは、笑い出しそうになるのを、どうにか堪えていた。
「わたくし、早稲へ帰ります。すぐに整えなさい。」
「セイ。よく考えなさい。なぜ、この山に来たのか。」
「黙りなさい。私は早稲の娘です。それなのに、こんな山に。」
「心変わりしても、戻れませんよ。」
「ハッ。戻るもんですか。」
「すぐに釜戸社へ、使いを出します。それまで、仕置場にいなさい。」
「はぁぁぁ? 誰にモノ言ってるの。私は」
「連れて行きなさい。」
「ちょっとぉぉぉ、は、離しなさい。」
「騒がしい子ね。帰りたいなら、止めないわ。」
「十二まで育てたんです。責められないでしょう。」
フクもツルも、呆れ顔だ。
数日後、釜戸山。
「エイさま。雲井社から、使いが。」
「雲井社?」
「はい。その、山守社にも、断られた・・・・・・。」
???
「エイさまが祝になられて、すぐの頃。幼子を二人、雲井社に、託しました。十二まで育ててほしいと。」
「そうですか。そうまで言うなら、止めません。しかし、早稲の村長も、倅ジンも、罰せられました。使いを出しますが、セイの願いが叶うとは、限りません。」
「はい。」
「断られたなら、その先は。」
「そ、れは、その。」
「釜戸山は、受け入れません。」




