表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
乱雲山編
94/1618

5-21 出生の秘密②

知らなかった。私は、父さんの子じゃなかった。そうか。だから、思い通りにならなかったんだ。長か、倅の子ってことは。ウフフ。


セイは暴れるのを止めた。早稲に帰れば、長の子か、孫として生きられる。そうすれば、コウと幸せになれる。私は、選ばれた娘。合ってたじゃない。




「ゴロゴロさま。セイが早稲の子というのは、違い、ないのですか。」


「違いない。妖怪の力を侮るな。」


「侮るなど。」


「フンッ、分かっておる。気に病むな。」



「セイの母は、沼田に逃げ込んだ。村は滅んだが、沼の主は生きておる。その主が言ったのだ。早稲から逃げて来た娘は、身籠っていた。生まれたのは女で、名をセイ。村の男が、己の子として育てたと。」


「では、セイは。」


「早稲の子だ。」




セイは、晴れ晴れとしていた。何もかもが輝いて見えた。やっと、思い通りになる。


朝餉の器を下げにきた、祝人に言った。


「祝に話があります。会わせなさい。」




雲井社でセイは、笑い出しそうになるのを、どうにか堪えていた。


「わたくし、早稲へ帰ります。すぐに整えなさい。」


「セイ。よく考えなさい。なぜ、この山に来たのか。」


「黙りなさい。私は早稲の娘です。それなのに、こんな山に。」




「心変わりしても、戻れませんよ。」


「ハッ。戻るもんですか。」


「すぐに釜戸社へ、使いを出します。それまで、仕置場にいなさい。」


「はぁぁぁ? 誰にモノ言ってるの。私は」


「連れて行きなさい。」


「ちょっとぉぉぉ、は、離しなさい。」




「騒がしい子ね。帰りたいなら、止めないわ。」


「十二まで育てたんです。責められないでしょう。」


フクもツルも、呆れ顔だ。




数日後、釜戸山。


「エイさま。雲井社から、使いが。」


「雲井社?」


「はい。その、山守社にも、断られた・・・・・・。」


???


「エイさまが祝になられて、すぐの頃。幼子を二人、雲井社に、託しました。十二まで育ててほしいと。」




「そうですか。そうまで言うなら、止めません。しかし、早稲の村長も、倅ジンも、罰せられました。使いを出しますが、セイの願いが叶うとは、限りません。」


「はい。」


「断られたなら、その先は。」


「そ、れは、その。」


「釜戸山は、受け入れません。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ