10-67 記録更新!
明里は隠の国。人の世に留まり、人に望まれ神と御為り遊ばした悪取神。
なんとなく思うんだ。祝だった悪取神と照は、顔見知りなんじゃナイかって。犲の里と蛇谷は離れているけど、隠なら行き来できそうだモン。
「そろそろ、かな。」
蜷局を巻いていた照がアコの肩に乗り、ニコリ。
「うん、行こう。」
幾ら考えてもサッパリ解らない。真中の七国には戦好きしか居ないのか、奪い合わなければ生きられないのか。
懲りもせずドッと押し寄せ、光江の地に降り立つ。
「ナッ。」
「おい、アレ。」
「あぁ。」
「どうする。」
「見定めよう。」
悦、采、大野、光江、安から集められた長が見合い、頷いた。離れたトコロに居るから、巻き込まれないと思ったのだろう。
「後ろ、ガラ空きだよ。」
闇の種を植え付けてからアコが笑う。長どもが振り返り、ギョッとしてからダッと襲い掛かった。
メキメキ、ポンッ。
「わぁ、もう芽が出た。」
発芽、最短記録更新!
「ナニヲジタ。」
胸を押さえながら、目を血走らせる長ども。
「ナンダ、ゴレ。」
蔓がグングン伸び、葉がポポン、ポンッ。
苦しむ長どもを置いたまま、照の背に乗り兵の前へ。
「兵ども、止まれ。この地は光江、耶万に組み込まれた国だ。先触れも無く仕掛けるなど、許されぬ。ドコから来た。」
と言いながらトストスと闇の種を植え付けるアコ。兵どもは胸を押さえたり、パチパチ瞬きしたりイロイロ。
「ハッ、子がぁぁっ。」
兵頭だろうか。胸を押さえて苦しみだし、ガハッと血を吐いた。それを見たのも呻き出す。
「逃がさないよ。」
耶万社のアサ、兵の足元に闇を展開。
ズボッと落ち込み、仰け反る。前列が沈んだのでトストス攻撃。膝をついたり屈んだりして低くなったら、後ろのに植え付けてゆく。
「ダズゲデ。」
トストストス、トストス。
「ジニダグナイ。」
「じゃぁナンデ、こんなトコまで来たの。」
真中の七国の隣は中の東国だが、ココは大貝山の統べる地。津久間の統べる地の東端には火の山島があり、グルッと回らなければ来られない。
岸多を避けるには狭門を抜け、近海の沖に出るしか無いが苦しかろう。
水海なら飲めるが、塩海の水は飲めない。舟で渇きを癒せるホド、瑞瑞しい木の実が採れるなら仕掛けないハズ。
ドッと攻め込んだ、というコトは?
「さよなら。」
アサとアコが地に潜る。危ないからネ。
ドドドド、ドォォン!
五人の長から闇を吸い、シッカリ根を張りグングン育つ。五つが絡み合い、グワングワン揺れながら多くの花を咲かせた。
「ナンデゴウナッダァァ。」
柱頭は人の顔で、花糸が誘うようにクネクネ。葯から闇の粉が生じ、とても気持ち悪い。そんなのが雪柳のように花をつけ、ギッシリゆさゆさミッシミシ。
ヒュゥゥゥ、ドッカァン。
鈴生りの実が弾け、光の雨が降る。それを浴びても消えない闇を吸い、兵たちもポポンと花を咲かせる。
キュゥゥ、ドドンと実を付け弾け、光の局地的豪雨が光江を襲う。結果、悪いの全て浄化完了♪