10-65 知らねぇよ
雲は他の忍びと違い、祝の力が無ければ見えない全てが見える。恐ろしく強く、良村と繋がっているトカなんとか。
雲井社は矢弦社と結んでいる。がフラッと社を訪れるコトなど、これまで無かったのに来た。
というコトは・・・・・・。
「明里は隠の国。」
「明里王は元、祝。」
「人から望まれ、神に御為り遊ばした。」
三妖怪、見合ってハッ!
「明里は犲の里だった。」
「御犬社の祝には、『滅びの力』がある。」
「隠になっても使える、とすれば。」
三妖怪、額を合わせてゴニョゴニョ。
「フッフッフ。」
「大貝神、御気を確かに。」
使わしめ土、アワアワ。
「土、私は決めた。明里と結び、大貝山の統べる地から闇を消す。大祓せずにな。」
パチクリ。
「光江、悦、大野、采、安の長に滅びの力を使い、光江に集めさせるのだ。話が纏まれば、クックック。」
あぁ、アコを動かすのですね。解りました。
「では急ぎ、明里へ行って参ります。」
一礼してスササ。
明里を守るため、大貝神と力を合わせると御決め遊ばした悪取神。祓っても祓い切れないアレコレを清める前に、社へ使いを出された。
大貝神、耶万神、悪取神。耶万社に集い座して神議り。
なぜ殺さない。知っている事は全て、洗い浚い話したのに。死にたくない。思ったんだよ、東国に攻めなきゃイケナイって。
何でだろうな。
唆された? ハハッ、そうかも。
浦辺を見て羨ましいと思った。痩せこけたのが一人も居ないし、浦からでも整えられた畑が見えたし、家も着ている衣もシッカリして皆、ツヤツヤしていたから。
「何で戻ったんだろう。」
逃げ込んだ南国で暮らしていれば、飢えることも凍える事もなく生きられたのに。
生まれ育った地に戻らなきゃ、戦わなきゃ。そう思ったんだ、何となく。
「時は戻らない。」
そうだよ。でもさ、どう考えも分からない。あの時なぜ、いや止そう。そうさ、時は戻らない。戻せない。
耶万に仕掛けて攻められて、戦に破れてバラバラになった。
生き残りは奴婢となり、真中の七国に売り飛ばされて思ったよ。酷い扱いを受けるんだろうナって。
思ったより酷い扱いを受けながらも生きて、生きて生き延びて許せなくなった。
いや違う、同じ思いをさせたくなったんだ。で、使えるモンは何でも使って長に近づき、『耶万を落とせば兵が手に入る』と囁く。
戦ばっかで人が減り、毒を撒かれて人が減りボロボロ。放り込まれた生き残りナンテ居ない。そう思ったのに居た、しぶとかった。
考える事は同じさ。なぁ、オレたち裁きを受けたら死ぬんだろう。サッサと殺せよ。
腕も肩も固まって、足が重くて気持ち悪い。首をガコンと動かして見上げても、白いのしか見えない。
白いのに手足を引っ張ったまま縛られて、何かが吸い取られているのは分かる。頭がボゥっとして、死ぬ事しか考えられないや。
アハハ、何で? 死にたくなかったのにオレ、死にたいと思ってる。
明里の獄に耶万社の祝、ユイが触れるとサラサラと崩れ、スゥっと消えた。繋がれていたのがドサドサ落ちて、そのまま呻く。
アコが前に出て、ニコリ。
「裁きを始める。」
耶万の精鋭が罪人を裁く。
真中の七国で力を持つ者に近づき、耶万に仕掛け攻め込むよう唆した。松田と浦辺に仕掛けるも捕らえられ、生まれ落ちた事を悔いた事まで知られてしまう。
何も言う事は無い。全て正しい、その通り。長がドコに居るのかって? 知らねぇよ。ソッチで探せや。




