10-64 仲良くしましょう
グングン進み耶万に出ると、闇から白い獄を取り出しニコリ。もう一つは、隣の獄に出した。
「おかえり、アサ。コレは何だい。」
「祝が触れれば消える、明里の獄です。大きな鳥もいただきました。」
真ん丸で美味しそう。じゃなくて、祝が触れれば消える獄? 神の御業だよね、そうだよね。
「アコ、落ち着け。この中に居る限り死なん。」
憑き蛇に言われ、ホッ。
「ねぇ照、耶万神はいつ御戻り遊ばすのかな。」
この鳥は悪取神からの贈り物に違い無い。お供えしてから、皆で美味しくいただこう。叶うなら、傷む前に。
「向かわれたのは大貝社。夜までに御戻り遊ばす、と思うが分からん。」
そんなぁ。
「ナッナッ、何だってぇ! 耶万に破れて組み込まれ、静かになったと聞いたが違うのか。違ったのか。」
代替わり為された大貝神、とっても幼いのに御目がコワイ。『少しでも闇を纏えば、恐ろしいコトになる』と使わしめ土、大慌て。
「耶万神。」
「はい。」
冷や汗ドッバァ。
「悪取神に御願い申し上げ、『滅びの力』を揮っていただこう。なぁに、隠は何があっても隠。」
ゴクリ。
「神は闇堕ちすれば妖怪になるが、悪取神は人の世に御坐す隠神で在らせられる。」
悪ぅい御顔を為さる大貝神。直日神で在らせられるが、代替わり為さっても禍津日神っぽい。
「そうと決まれば土、明里へ。」
何が決まったのですか、なんて伺いません。
「はい。」
としか言えませんから。トホホ。
「私、戻らせてイタダキマス。」
耶万神、ドロン。
社に御戻り遊ばすと使わしめ、マノをギュッと抱きしめ為さる。悪取神から贈り物? いただこう、パクリ。
御下がりは社の皆で美味しく、いただきました。
増えているとは思ったけれど、南の人は恐ろしいわね。
ハァ、人はナゼ殺し合うの。虫だって鳥だって熊だって、食べるためにしか殺さない。なのに人は奪うため、従えるために殺すのよ。
私には解らない、解りたくもないわ。
「フク、お食べ。熊肉だよ。」
雲井神の使わしめゴロゴロ。熊肉が大好きな祝のために、トッテオキの干し肉をススッ。
「はい、いだたきます。」
パクリ、もぐもぐウットリ。
乱雲山、雲井社が裁くのは人だけでは無い。人の世に留まっている隠や妖怪、合いの子だって裁く。
雲井の祝は乱雲山から出られないので、山の外で裁くのは禰宜。
乱雲山は天霧山、釜戸山、良山とも結んだので、霧雲山より先にイロイロ入ってくる。
「鳥の川は早稲、暴れ川は風見、曲川は嵒が目を光らせ、来たのを消す。」
雲井の社憑き、使い狐コン。
「耶万を降しても、霧雲山は痛くも痒くもナイ。」
同じく社憑き、使い烏キラ。
「人など隠の守がサクッと消すが、もし良村の誰かが傷つけば恐ろしい事に。」
ゴロゴロ、げっそり。
「耶万社には蛇憑きが居ますし、使わしめも蛇。耶万に組み込まれた国でアヤシイのは采、悦、大野、光江、安の五つ。他は穏やかですヨ。」
「くっ、雲。」
祝の力が無ければ見えないアレコレが、はっきりバッチリみえちゃう天霧山、矢弦社の忍びデス。
「お伝えします。御犬様の後を継ぎ為さった悪取神が、御力を強められました。明里は耶万に組み込まれたのではナク、認められたダケですヨ。仲良くしましょう。」