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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
933/1589

10-61 悪いってのは


倭国(しずのくに)飛国とのくにの舟が海に漕ぎ出し、中の東国ひがしくにへ向かう。


耶万やまは奥にあるので光江を落とし、つわものを北へ進めるツモリで居る。とはいえ遠い、遠すぎる。だから松田、浦辺、加津をくだす。



舟を四つに分け一つを残し、三つを六つに分ける。先に入ったのが見えなくなってから、十を三つ数えて戦いに加わり、付き従わせるのだ。






「な、ぜ。」


どんなバケモノが居ようが構わない。これだけの兵で攻め込めば勝てるハズ。そう思っていたのに。


「ナゼも何もナイだろう。」


松川に入ったのは三隻。松林に隠れ、沖から見えなくなって直ぐだ。片っぽの足が取られ、逆さに吊られたのは。中には首を吊られ、垂れ流しているのも居る。


「だ、れか。」


助けて! 嫌だ、死にたくない。


「ヲォォォ。」 ゴハンダァ。


何だアレは。人を食らう・・・・・・バケモノ、合いの子か。あんなに大きく口を開けて、ダラダラよだれを垂らして待っている。


オレたちを食らう気なんだ。


「ギャァァァァァ。」


痛いイタイ痛いよ。


なぜ頭から食わない、腹を食い破る。殺せ、一思いに殺せよ。騙された! 東のを信じたからオレ、こんなトコで殺されるんだ。




「ダズゲデェ。」


浦辺の港に入って思ったよ、アタリだって。


遠くに人が、肉付きの良いのが居たんだ。だからサッサと落として奪おうと、舟を飛び降り駆け出して。


「ジニダグナイ。」


シュンシュン聞こえた。


逆さ吊りで運ばれて、バケモノから逃げようと。首を吊られたのは動かないケド、オレが取られたのは足。解ける、イケルと思ったのに。


「ゴメンナザイ、ユルジデ。」


何も見えないのに、ハッキリ聞こえるんだ。グチャグチャ食らう音、泣き叫ぶ声。



オレなんでいくさに出たんだろう。


兵が死ぬのを見て怖くなって、南国みなのくにへ逃げ込んだんだ。つらかった、ひもじかった。でも南国じゃ殺されない。だから生き残った、生きて戻れた。


嬉しかったのにナゼ。






悪取社あとりのやしろから加津社かづのやしろへ、真中まなか七国ななくににある『倭国と飛国の兵が押し寄せる』と告げられて直ぐ、社の司が走る。


知らせを受けたおさかしらが、煙と布で舟に知らせた。




「ミカさん。悪い舟の人、モヤモヤしてる。」


イイが港で待ち構えるミカに告げ、ニコリ。


「コッチから海に出るか。」


「イイも出る! 悪いのはね、人だけじゃナイの。」


「エッ。」


「んっと、合いの子じゃないよ。神様? 使わしめでも無いの。何て言うか、モヤモヤなの。」


神でも使わしめでも、合いの子でも無いってコトは妖怪じゃない。となるとおに


「ねぇミカさん。悪い神様も、神様なの?」


「そうだよ。」


悪いってのは、わざわいもたらす・・・・・・神。となると禍津日神まがつひのかみ。いや、でもなぁ。


会岐神あきのかみ大石神おおいしのかみは、狩りの神様。加津神かづのかみは釣りの神様。千砂神ちさのかみ腰麻神こしまのかみは、食べ物の神様。悪取神あとりのかみ耶万神やまのかみはね、違う神様だけど良い神様。殺神あやかみはチョッピリ怖いけど、お舟に御坐おわす神様はウンと怖いの。」


殺神は軍神いくさがみ。と、いうコトは?


「悪取神より言伝ことづてです。『舟に闇堕ちスレスレの神が憑くか、潜んでいなさる』との事。」


悪取神の使わしめあけみがタンッと、加津社から港まで飛んできた。


隠なので人を踏み潰す事は無いのだが、何となく一っ飛びした方が良いと思ったのだ。


「ありがとうございます。イイ、サハを呼んできておくれ。ツサ、清めの水を。」


「ハイッ。」


声を合わせ、キリリ。しばらくするとイイは祝を負ぶって、社の司は清めの泉から水を汲んで港に戻る。


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