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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
931/1586

10-59 判子ではなく


秋の終わり、鞣里なめざとの開墾作業に取り掛かかった。


田畑に生えた木を抜き、ボウボウ生えていた草に森の枯葉を混ぜて鋤き込む。長らく放置されていた地は酷く痩せ、そのままでは使えなかったから。



春になりテイッ、掻き掻き。テイッ、搔き搔き。


黙黙と作業するあけみを見つめ、気合を入れる悪取は元、祝。糸を張り巡らせるのは上手うまいケド、ムッキムキには縁遠い。けれどメゲナイ、へこたれない。






「こんなモンかな。」


地の傾きを調べ、水が流れるよう整えた。


田んぼには水が要る。松川の源の泉は大きく、コンコンと湧いているから涸れる事は無いだろう。



松田に滅ぼされる前からあった田に畑、獣除けの柵、水飲み場など、出来る限り元に戻した。鞣里社なめざとのやしろを除いて。


この地に人が戻るまで、まだまだ掛かるだろう。けれど戻ったら・・・・・・。


人の手で組み直されても、御隠れ遊ばした神は戻られない。けれど人に望まれればいづれ、現れ出られる。


「この命尽きるまで、この地を守ります。」


鞣里神なめざとのかみは狩りの神で在らせられた。使わしめはカノシシのおにで、御犬おいぬさまを避けてらしたな。


明を見たら御口を開け、後退り為さるカモ。




数多あまたの神が民の魂を根の国へ送り為さり、使わしめと共に御隠れ遊ばした。


松田の縄張りに幾柱いくはしらの神が御坐おわしたか、私には分からない。けれどハッキリ言い切れる。『耶万やまに滅ぼされるまで止まらなかった松田は、真中まなか七国ななくにと同じだ』と。



松田の縄張りだった地は全て、明里あかりとなった。


この地に悪いのは要らない。どれだけ多くのつわものが押し寄せても、人でも隠でも妖怪でも残らず片付け、明里の民を守り抜く。



隠は何があっても隠だが、神は闇堕ちすると妖怪になる。妖怪が為れるのは使わしめ、神には為れない。もし闇堕ちすれば、明里を去る事になるだろう。


それではイケナイ。守れないじゃないか。




「悪取様?」


「何でもないよ、ありがとう。」


イザとなれば明に、いや違う。闇堕ちせぬよう努め、皆を導かなければ。






「フフッ、フフフフフ。」


やっといくさが終わった。裏切って逃げ出したのが、他の地から逃げ帰って来たんだ。纏めて耶万に送り込み、倭国しずのくにに降らせる。


「グフフ、グァハハハハ。」


やっと戦が終わった。裏切り者も戻ったし、ゆかりの者を捕らえて従わせよう。そうすれば多くの兵を送り込める。


耶万よ、飛国とのくにに付き従え。




「ハァ。」


倭国も飛国も諦めが悪い。他の五つは引いた、いや諦め・・・・・・てナイ。人よ、なぜ強さを求める。


アチラでもコチラでも望まれ、現れ出るのは軍神いくさがみばかり。このままでは真中まなか七国ななくには、濃く深い闇を溢れさせる地となるだろう。


多紀神たきのかみ、御気を確かに。」


使わしめは石南花しゃくなげおに、モモ。深山に生えるからか、殺し合うからか、大の人嫌いである。


「モモ、山を閉じよう。」


多紀神は山神で在らせられる。閉じようと思えば閉じられるが、閉じたトコロで真中の七国の人は戦を止めないだろう。


「そうですね。」


「いや、『そうですね』じゃナイでしょう!」


御嶽みたけの治めの隠、鮎神あゆかみの使い鮎が突っ込んだ。


「閉ざされているハズの隠のときから、人に化けた使い鮎が・・・・・・。いらっしゃいませ。」


夢から覚めたモモ、キリッ。


「真中の七国から闇が溢れました。隠の世に流れ込む事はアリマセンが、闇堕ちが暴れる前に清めてください。では、コチラに御手を。」


スッと札を出し、ニコリ。手形ください。


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