5-20 出生の秘密①
「何なのよ。どいつもこいつも。」
イライラしながら、洗いものをするセイ。
「信じられない。使えない。」
プリプリしながら、草むしりをするヒサ。
ツウはもちろん、コウにも近づけない二人。小さい子からも引き離され、事を押し付けることも、出来ない。
乱雲山の、妖怪たちからも見張られ、思うように運ばない。雲井社の三妖怪が命じたのだ。抜かりはない。
人は騙せても、妖怪は騙せない。そのことに気づかないまま、セイは十二になった。
「セイ。あなたは大人になったのです。己を律し、生きる術を、身につけなさい。」
はぁ? 偉そうに、誰に向かって言ってるのよ。私はね、選ばれた娘なの。だから、私のために生きなさい。
「セイ。聞いていますか。」
あぁぁぁ、イライラする。
「大人なら、契れますよね。私、」
「コウとツウは、誓いを交わしています。気づいているでしょう。諦めなさい。」
「私は、」
「諦めなさい。」
「嫌よ。」
「あのね、セイ。思い違いしないで。あなたは、選ばれた娘などでは、ではありません。」
「はぁ? アンタ、オカシイ。」
「は、祝にっ。なんということを。」
「黙れ、ババア。」
「連れて行きなさい。」
仕置場へ放り込まれたセイは、叫び続けた。
「ここから出せ。」
「選ばれた娘に、何をする。」
「頼まれたから、来てやったのに。」
「オマエら、何さまだぁぁぁ。」
「オイ。セイ。」
「だ、誰よ。どこにいるのよ。」
「目の前に。」
「はぁ? 誰もいないんだけど。」
「良く聞け。歪んだ人の子よ。この山から出て行け。」
「出て行け? 誰に、」
「オマエだ、セイ。乱雲山から出て行け。」
「私は、」
「選ばれた娘ではない。」
「私は、」
「帰りたいか? 親の村に。」
「早稲だ。オマエは早稲の子だ、セイ。」
「う、嘘よ。だって、それなら」
「嘘ではない。オマエの母は、早稲の村で生まれ、育った。十二になって、すぐだ。長と、倅ジンに弄ばれた。親に助けられて、早稲を逃げ出したのだ。そして、親を頼って、戻った。」
「だったら、なぜ。」
「親も、頼れる者も、いなかった。一人残らず、罰せられて、な。」
「な、なに、それ。」
「セイ。オマエは早稲の長か、ジンの子だ。」




