10-50 軽業師もビックリ
耶万に残らず殺され、滅ぼされた国は多い。松田は海に近くて隠れ易い、良いトコロにある。
「ホドホドにしろよ。」
伊東、采、悦、大野、久本、光江、安の生き残りが集まった。
会岐、大石、腰麻、加津、千砂のも居そうなのに、何で一人も居ないんだよ。居たら潜り込ませて、中から壊して奪えるのに!
集まったのは酷く歪んで、手が付けられないヤツばかり。オレでも引くわ。人の肉なんて不味いモン、よく食えるな。
「ヒャッヒャッヒャッ。」
・・・・・・まさかオイ、人じゃ無いのか。
食いモンが無いから、死んだのを食らうってのは有るよ。貧しい里とか村とかさ。けど他に食うモンが有るのに、人なんて食うか? 食わねぇよ。
「ヴゥゥ。」
他じゃ生き難いのを集めて、松田に国を建てよう。話し合って決めた事。諦めないし手を抜く気も無いから、出たいのは何でも引き入れた。
けどよ、人じゃ無いのは。
「火の山島は波が荒い。しっかり休めよ。」
「おぉ、分かってらぁ。」
違う舟に乗ろう。アヤシイのは先に進ませ、暴れせれば生き残れる。
もう寝よう。岸多に見つからず、松田に着けばソレで良いんだ。難しく考えるな。
「悪取様、来ます。悪いのが近づいてきます。」
昼過ぎ。海望に居たホウが『殺す』とか『食らい尽くす』とか、恐ろしい言の葉を聞いた。それら全て、海から聞こえる。
少しづつ大きくなっているから、コチラへ向かっているんだ!
「ありがとう、ホウ。」
嫌な感じがしたので『昼からは海に出ないように』と伝えた。加津にも伝えたから今、沖に出ている舟は無い。
「悪取様。多いです、悪いのが押し寄せてきます。」
「そうか。松田に近づいてはイケナイよ。」
「はい。」
松田、松裏、松林にも罠を仕掛けた。纏めて片付けられる。
人から奪うのは気が引けるが、迷ってイラレナイ。明里の民を守らなくては。
「ナッ。」
松川に入り、奥へ奥へ進む。
「アァッ。」
松田に着けばコッチのモノ。
「グハッ。」
そう思っていたのに一人、また一人消えた。
「何だ?」
見上げると・・・・・・プランプラァン。
「ハッ、放せぇ。」
暴れれば暴れるホド締め付けられ、グタッ。
「た、すけ、て。」
ボロボロ泣きながら命乞い。
悪取は目にも留まらぬ早業で、ゴロツキの一本釣りを遣って退けた。結果ゴロツキによる松田、建国計画は失敗に終わる。
「混じっているカモしれない、とは思っていたが。」
ゴロツキの中に妖怪、闇堕ちした隠まで居た。纏めて清めたが耶万、いや大貝山に知らせれば良いのか?
「西国からは、もう来ないだろう。」
伊東、久本、光江は耶万に睨まれ、身動き出来ないハズ。残るは采、悦、大野、安。
「白い森は抜けられない。目指すなら、椎の川か。」
松田に誰も暮らしてイナイ事は、広く知られている。だから川岸を上がらず、松川から来るハズだ。諦めるまで今のまま、悪しいの集めに使おう。
「悪取様! 産まれます。産まれそうです。」
「もう?」
明を抱えてタッと、張り巡らせた糸の上へ。そのままシュタタタ。
悪取は忍者でも蜘蛛でもなく祝だったのに、軽業師もビックリな離れ業を披露。ホエェェ。