5-19 筒抜け
「ツウ、はい。」
コウが花を摘んできてくれた。
「ありがとう。」
見つめ合うツウとコウ。二人の世界、である。声をかけるなど。
「私にはないの?」
「えっ、と。ないよ。」
「信じられない。私よ、ヒサよ。」
「ヒサはともかく。私よ、あなたのセイよ。」
何を言っているんだろう、この子たちは。子の家で、恐ろしい目で見ていたな。思った通りだ。きっと“黒いもや”がかかっているに違いない。
「ツウ、コウ。社へ戻りなさい。」
顳顬を押さえながらツルが言った。
「行こう、ツウ。」
「はい。」
仲良く手を繋いで、雲井社へ向かう。そんな二人を憎々しげに見るのは。
「セイ、ヒサ。諦めろ。」
「何を諦めるのよ。」
「そうよ、言いなさい。」
ふてぶてしい。
「稲田の子に、手を出すな。」
「はぁ? 私とコウは結ばれる。そういう決まりなの。」
「コウと結ばれるのは私よ。わ・た・し。」
なぜ、そうなる?
「何度でも言う。稲田の子に、手を出すな。」
「ねぇ、ヒサ。」
「何よ、セイ。」
「力を合わせない?」
「どういうこと?」
コウがどちらを選んでも、恨みっこなし。私たちの敵は、ツウ。だから、消す。
乱雲山は険しい。村の外れには、切り立った崖が。足を滑らせて・・・・・・ということにすれば。
コウは、矢光の長と狩り。ツウは、切雲の村で織りもの。そう聞いた、だから。
悪だくみ、筒抜け。
「アイツら、足りないのか。」
「だろう、な。」
「雲井社の、祝の力。知らないのか。」
首を傾げる三妖怪。
「皆さま、それくらいで。」
「フクよ。どうする気だ。」
「害する前に、とは思います。思いますが、あの二人。悪だくみが上手くて。」
「上手いか? 筒抜けだぞ。」
「いいえ。どんなに見張りを増やしても、やってのけるのです。」
「確かに。」




