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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
919/1586

10-47 伝えるの忘れてた


悪取社あとりのやしろの離れには、引き取られた合いの子が暮らしている。年の順にアサ、ハヤ、チカ。シシ、イコ、ムツ、ナヲ。


スサとヒサは母と暮らしているが、離れで暮らす事になるカモしれない。ちなみに女児はハヤ、イコ、ムツの三妖。



アサは人として生まれた。他の子は妖怪として生まれたが、人と同じ時を生きる。違いはあっても『妖怪の血を引いた合いの子』なのは同じ。






「ホウも人と同じ時を生きるの?」


四妖、興味津津きょうみしんしん


「さぁ、どうだろう。人と同じように生まれて、同じように育ったけど・・・・・・。」


正直なトコロ、良く分からない。


人として生まれたアサ、スサ、ヒサも他の子と同じで生まれて直ぐ、大穴に放り込まれた。けれどホウは人と同じように生まれ、母の乳を飲んで育つ。


大きくなるのも人の子と同じで、遅くも早くもない。


「ふぅん。」


興味を失ったのか四妖、クワァっと欠伸あくびしてコロン。そのままスピィ。


「この子たち、生まれたばかりなの。気にしないで。」


ハヤが四妖の腹に布をかけ、ニッコリ。夕餉を食べてオネムだったダケ。シシたちに悪気は無い。


「エッ、そうなんですか?」


どう見ても六つ、いや七つに見える。


「アサもチカも私も、この子たちより早く生まれだダケ。生まれて一年も経ってナイわ。」


・・・・・・三つくらいに見えるけど、シシたちと同じ年に生まれた、と。合いの子にもイロイロ居るのかな。


「ホウも同じだよ。」


チガに言われ、パチクリ。


「皆どれだけ生きられるか分からない。でもね、これからは人と同じように年老いるんだ。人と同じように生まれて大きくなったホウも、これからも人と同じように年老いるでしょう?」


「そう、だと思う。」


「ほら、同じ。」


「そうだね。」






夜更かしせずにグッスリ眠り、朝早く目が覚めた。


悪取社のある明里あかりは海から離れている。とても静かなのに、波の音が聞こえない。当たり前の事なのに少し、寂しくなった。




「おはよう、ホウ。」


「おはよう、アサ。」


社を通って来たのだから、いつか会牧あまぎへ行けるだろう。明里の子になったんだから、明里で暮らして明里で死ぬ。



会牧の海がどんなか知らないけれど、浦辺や松田の海とは違うハズ。違う海を見て会牧を懐かしむのは当たり前。


見る前からアレコレ考えても、どうにもナラナイよね。分かってる。でもいつの日か、ほんの少しでも良い。明里に来て良かった、楽しかったと思って欲しいんだ。




「おや、早いね。」


あけみ、お目目ショボショボ。


「おはようございます、明さま。」


「おはよう、アサ。ホウ、良く眠れたかい?」


「はい。ありがとうございます、明さま。」


悪取神あとりのかみの使わしめ、明さまは赤い目をした白いやまいぬ。祝の力なんて持ってないのに、どうして見えるんだろう。


言の葉も解るし、どうなってるのかな。


「そうだよね。でも明里の皆、見えるんだ。」


「へぇ。・・・・・・ん?」


「アッ、私には心の声が聞こえるんだ。ハヤは考えるのが早くて、すばしっこい。チカは軽やかに動けるんだよ。ごめんね、伝えるの忘れてた。」




悪取神も明さまもおに。悪取神は国つ神で、明里王あかりのきみでも在らせられる。


おさおみかしらも人。長はカハさん、大臣おおおみはヒシさん。スサはカハさんの、ヒサはヒシさんの子。


他にも人が多く暮らしている。



ココは明里、会牧では無い。殺されず生かされ、引き取られたんだ。この手で明里を守ろう、力を尽くそう!


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