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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
917/1586

10-45 他で生まれていたら


数は多く無いのだが、合いの子が流れ着く事が有る。


大きな頭に小さな体、ギザギザの歯。舟の中で生まれ母を食らい、他の人も食らったのか力が強い。


気を失っている間にギリギリ縛り、合いの子を入れるひとやに放り込む決まりだ。






「ウギャ。」 ダシヤガレェ。


「ビギャァ。」 メシクワセェ。


うるさい。」


会牧あまぎの社の司が、冷たい目をして言いはなつ。


「ツガさま。コイツら、何て。」


「他の合いの子と同じですよ。皆さん、構え。」


狩り人たちが弓に矢をつがえ、グッと引く。


「放て。」


シュン、トサ。シュン、トサ。シュン、トサ。


「ギャッ。」 ナンデ。


眉間みけんや心臓に矢がブサブサ刺さり、ピクピク。サッと開いた扉から、斧やつちを持ったきこりが乱入。迷わず叩き割る。



死んだのを確かめると具を持った手ごと、祝人はふりとに流し清めてもらう。それから手渡し口を覆っていた布、脱いだ着物をポポイ。


飛び散ったアレコレを洗い流しっこ。良く乾いた枯れ枝などに火をかけ、ミンチになった合いの子は獄ごと燃やされ根の国へ。



スッポンポンで男たちは海へ入り、ザブンと潜って身を清める。


清めの浜に近づく和邇わにはイナイ。というより会牧神あまぎのかみの使わしめ、アツが怖くて近づけない。


加えて清めの儀が執り行われている間は、使い和邇がグルッと浜を囲む。万に一つもパックンされナイので、心置きなくフルフル出来るのだ。



浦の獄から清めの浜は、ほんの少し離れているので見られる事も。けれど俯かない。『恥ずかしがったら負けだ』と思って胸を張る、ようにしている。


通学路でオープンするのと一緒にしないで。






「増えたな。」


清めの儀を終え、火に当たりながらポツリ。


「あぁ。それに少しづつ、大きくなっている気がする。」


アツアツの串焼きを頬張り、ゴックンしてから一言。


「だよな。」


・・・・・・。




考える事は皆、同じ。大きないくさが始まる。


狙われているのは中の東国ひがしくにだが、火の山島に押し寄せるカモしれない。そうなったら戦うが、守り切れるだろうか。



しづめ西国にしくにや中の西国のつわものは、初めから中の東国を目指して舟を出す。『遠いからココで良いや』と、狙いを変える事は無いだろう。


けれど真中まなか七国ななくには? いつか足りない兵を補うため、この島を狙うだろう。




「何で戦なんぞ。」


鎮の西国は鎮の西国で、中の西国は中の西国で、真中の七国は真中の七国でたたかえば良い。他に目を向けるな、手を出すな諦めろ!


「助け合い、支え合えば良いのに。」


それが出来ないから戦を仕掛け、攻め込むのだ。分かっているが解らない。


狩り人は獣を狩り、釣り人は魚を獲る。樵は森に入り、木を切ったり育てたり。生きるためにイロイロするが、食べるだけしか奪わない。



戦好きは食べるためでは無く、楽しむために奪っているように思う。


何が楽しいかサッパリだ。けれど考えつかない、思いもシナイ。殺した誰かの後ろには親に兄弟、姉妹。爺婆じじばばゆかりの人だって居る事を。


「西国や七国では『嫌だ』って、断れないのかな。」


合いの子だって、人として生まれていれば殺されなかった。人を食らった合いの子とは暮らせないから、殺すしかナイ。殺さなければ必ず、誰かが食い殺される。



妖怪に襲われた人から生まれる合いの子。生まれて直ぐ親から引き離されれば、人を食らう前に引き離されれば社に引き取られ、人と共に暮らせるのに。


オレたちが殺した合いの子は皆、人を食らうバケモノ。もし取り上げてくれる妖怪が居たら、国守が居たら違っていた。


「ココで生まれたから言えるんだ。他で生まれていたら・・・・・・、違ってたんだろうな。」


パチパチする火を見つめ、男たちが頷いた。


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