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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
913/1586

10-41 何も無いハズだが


津久間、おそれ山、斑毛まだらげ山の統べる地を飛び回り、力をふるわれたのだ。もうクッタクタ。悪取社あとりのやしろに御戻り遊ばすなり、バタンキュゥ。



松田に滅ぼされた里の一つ、鞣里なめざと。犲の里と同じで諦めず、松田に逆らい続ける。生き残りは『松毒』を飲まされ、苦しみながら死に絶えた。


むくろは葬られず獣に食い散らかされ、人の味を覚えた獣が住みつく。






「ケッ、何も無いな。」


売られた先から逃げ出したうねや大野、安、光江、悦の生き残りがワラワラ集まり、獣を狩って暮らし始めた。モチロン無許可。



攫った人を奴婢ぬひとし、アチコチに売りさばいていたゴロツキである。


売られた先でも悪さして、多くの命を奪ってきた。穢さず引き渡すので、買い手からの評価は高かった。けれど外道である事に違い無い。


「そう言うなよ。浦辺に住みついたのはバケモノだ、生きたままバリバリ食われるぞ。松田、松裏まつうらに罠を仕掛けたのも同じバケモノ。人がたばになっても勝てない。」


当たっているような、はずれているような。


「良いのが揃ってたのになぁ。」


悪意を持って近づけば即、逆さ吊りで松裏のひとやへ放り込まれる。イッパイになったら人を食らった合いの子が放り込まれ、生きたままバリバリごっくん。


「ココまで逃げ込めたんだ、良いじゃないか。」


松川の源の泉が真中まなかにあるので、悪い事を考えなければ海から入れる。その数、ザッと二十。まだまだ増えるだろう。


「『耶万やまの勢いが戻った』って、まことか。」


人のおさである社の司が、耶万をシッカリ見張っている。悪さすれば闇を植え付けられ、育てばバン。


かつて滅ぼした国は従えるのでは無く、組み込む事で支え合えるように変えた。言うまでもナク采、悦、大野、光江、安は除く。



あの五つは腐りきっている。


生まれた時は真っさらでも、育つとグニャリ。ナゼだかサッパリ分からないが、『悪さしなければ生きられない』としか考えられない歪みっぷり。


だから組み込むだけ組み込んで、従える事にしたのだ。


「あぁ。光江と悦に忍び込んだが、ガッチガチに固められていた。ありゃ祝の力だな。」


ギラン。


「売れるぜ。」


「やめとけ、死ぬぞ。」


共に忍び込んだヤツが同じ事を考え、整ったのを攫おうとした。すると何かが飛んできて、ソイツから勢いよく芽が出る。


アッと言う間に花が咲き実をつけ、バンとはじけて飛び散った。


「アレが何なのか分からないが、頭の中で響いたよ。『手を出すな』って。」


這うようにして舟に戻り、セッセと漕いで戻った。思い出したダケで、今でもブルブル手が震える。


あんなの、祝の力でなければ何なんだ。神か?


「お、脅すなよ。」






・・・・・・ん。あぁ、戻ったんだ。


「おはようございます、悪取あとり様。」


「おはよう、あけみ。何か変わった事は?」


「加津の国守が『松川の源の泉に、闇が集まっている』と。腰麻こしまの妖怪の祝が確かめに行ったトコロ、『悪そうなのが二十ほど、隠れ住んでいる』のを確かめました。」


張り巡らされた罠に掛からないので、まだ悪い事は考えてイナイ。そう考えて月の夜、タッと見に。


アレはイケマセン。悪そうな顔に、夜でもハッキリ判るホド濃い闇。気付かれないよう引き返し、お待ちして居りました。


「松川の源の泉。」


「はい。ココが松裏、ココが松田で、コレが松川。で、この辺りです。」


前足で地をクリクリして、爪でグゥっと線を引く。それからポンポンと、里があったトコロを示した。


「鞣里も朽ち果て、何も無いハズだが。」


「はい。家も囲いも朽ち果て、空っぽです。」


源の泉があるので、隠れ住むには良いダケ。


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