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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
911/1586

10-39 早ければ早いほど


たけのこがポコポコ生えたのなら、大喜びしてセッセと刈り取る。けれど食べられないのが次から次に、というのは嬉しくない。


アサたちの母を会牧あまぎへ送り出して直ぐ、津久間に入ったのは狩り尽くした。


あれから真中まなか七国ななくにとのさかいを清め、閉ざした事で防げている。けれど海から入ってくるのは、どうしようもナイのだ。






「境に立てられた清めの幕、通り抜けた合いの子が居る。いや居たとすれば、どうでしょう。」


妖怪の血を引くのがおかから入り込み、人と子をした。海から来るのはこばんでも、山から来るのは受け入れるだろう。


中には襲われ、ボンとふくれる腹をかかえて逃げ出した娘も。



人の子ならユックリ膨れてゆく。いきなりボンとか、ボッと膨れない。だから人の子では無いと判る。


妖怪に襲われたのか、合いの子に襲われたのか分からなくても、人に襲われたのでは無いのは確か。そんなのが入っているとなれば、生まれ育ったトコロでは産めない。


良那らなのヨシ、ですか。」


人の姿をした犬の妖怪と、人の間に生まれた子の末裔。男系だったので、闇を受け継いだ。完全に消滅したが、今も語り継がれている。


「妖怪の国守から伝え聞いた話なので、良く分かりません。けれどポコポコ生まれてくる子は、ヨシより妖怪の血が濃い新たな合いの子。津久間ごと囲めば、大祓おおはらえで清められるのでは?」


確かに。


「腹に入っているのが人の子か妖怪の子か、目に闇を集めれば見分けられるそうです。妖怪の国守に頼めませんか。」


加津や大石の国守と違い、他の国守は。


いや待てよ、会岐あき千砂ちさの国守。腰麻こしまの妖怪の祝に出来た事、津久間の国守にも出来るハズ。


コツさえ押さえれば何とか!


悪取神あとりのかみ、ありがとうございます。」


そうと決まれば、その前に。


「国つ神に御為り遊ばしたのです、この地から離れられないのは解って居ります。それでも今一度いまひとたび、津久間へ御越し願えませんでしょうか。」


津久間の海沿いに集まった、気の毒な娘たちを救えるのは一柱。八百万やおよろづの神が御坐おわすが、『悪取の力』を御持ちなのは悪取神だけ。


はらんで直ぐなら流せますが、育ってしまうと産ませるしかありません。人として生まれるか、人と同じ時を生きるか。いづれにせよ、妖怪の血を引く子が生まれます。」


妖怪の血が濃ければ、他とは違う力を生まれ持つ。人として生まれればアサのように、妖怪の血を引いていても恐れられず、人を守る事が出来るだろう。


けれど人として生まれるか、人と同じ時を生きるかは生まれないと判らない。


「はい。けれど早ければ早いほど、流せる子が多くなる。救える娘が増えるのです。」


解っている。けれどあきれるくらい流れ着く、人を食らった合いの子たち。張り巡らせた糸によりタプタプ袋に入るが、万が一という事も。



私は神になったが明里王あかりのきみあけみを残しても、社から離れれば直ぐに戻れない。


娘たちが入れられる家は、社から離れたトコロに建てられているハズ。少しでも戻るのが遅れれば、それだけ多くの民が死ぬ。


「・・・・・・社に、社の隣に集めてください。流せる子は流し、悪いのを取れるなら取ります。津久間に残る娘は残し、残れない娘は明里あかりに迎えましょう。食べ物が足りなくなる前に、届けてもらえますか。」


「はい、喜んで。」


届けられるだけ明里へ、食べ物を届けさせます。


「では参りましょう。明、戻るまで明里を頼むよ。」


「はい、お任せください。」


モフン。






津久間に戻った緑は急ぎ、全て伝えた。


社の司や長がテキパキ働き、娘たちを社に集める。津久間社でなくても社なら良いのだ。そう難しい事では無い。


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