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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
910/1586

10-38 やってられない


良那らなを落とすには岸多きしたに勝たなければ。


近海おうみ、大浦、万十まと氛冶ふやも欲しいが、強すぎて手が出せない。耶万やまを落とそうと光江に攻めれば、アッと言う間に殺される。



加津にも千砂ちさにもバケモノが居るし、浦辺もアヤシイ。何かコワイのが住みついた。



松田に送り込んだつわものは一人しか戻らない。戻ってもガタガタ震えて、使いモノにならない。


ハァ、何が起きている。何が有る。


松田は耶万に滅ぼされうね、安、大野のゴロツキが光江、悦の生き残りと隠れ住み、アチコチから攫ったのを集めている。


そう聞いたが、違うのか?



ゴロツキが兵に勝てるワケが無い。戻ったのを調べたが、毒は出なかった。


松裏まつうらを目指したヤツは戻らず、松毒も手に入らず、兵を送れば送るホド苦しくなる。






「加津でも千砂でも浦辺でも良い。バケモノを捕らえ、従わせろ。」


倭国しずのくにの新しい大王おおきみが命じる。けれど大臣おおおみ、臣たちも黙って俯き動かない。いや、恐ろしくて動けないのだ。


「どうした。」


伝え聞くトコロによるとふくはじけて死んだ者は皆、耶万のに闇を植え付けられたトカ。弾けた実から種が飛び、周りに居た人に。


それが育って、ポンと葉を開くとも。



加津も千砂も耶万に破れ、組み込まれた。浦辺は松田に滅ぼされたが、加津とも千砂とも付き合いがあったと言われている。


そんな地に手を出せばいづれ、体から芽が出て・・・・・・。



「何とか言え!」


揃ってバッと顔を上げ、ギッと睨みつける。


「恐れながら申し上げます。大貝山の統べる地、いえ中の東国ひがしくにから引きましょう。どれだけ兵を送っても、あの地は取れません。奪えません、勝てません。」


大臣が言い切った。


「この腰抜け! 目障りだ消えろ。」


フッと鼻で笑い、頭を下げてスタスタ。他の者も続き、残ったのは血の気の多いいくさ好きダケ。






コンコン。


「ごめんください。津久間から参りました、緑と申します。」


あけみは犲。夜行性なので、昼間はははそほらで休んでいる。悪取社あとりのやしろも洞と同じで広いのだが、何となく住み慣れた洞で寝そべり、スヤスヤ。


「悪取社へようこそ。使わしめ、明です。」


サッと毛繕いしてからシュタッと下り、ニコニコ。


「はじめまして、明さま。悪取神あとりのかみへ御取次を。」


「はい、しばらくお待ちください。」


小さなうつわき水をそそぎ、スッと出してからニコリ。



悪取は神だが、明里王あかりのきみでもある。明里の中心に建てられた社ではなく、横に生えている柞の大木おおきに居る事が多い。


里から張り巡らされた糸はグルグル廻り、悪いのをヒョイ。合いの子はタプタプ袋、悪い人は松裏のひとやにポイッ。獣はプランとさかさに吊られ、里まで運ばれる。



「悪取神。津久間神つくまのかみの使わしめが、御目通りをと。」


「ありがとう、明。鳥がこんなに掛かったよ。」


「わぁ、美味おいしそうですね。」


畑や開けた地に居た子を狙い、空から急降下。美味しく食べるツモリが、美味しく食べられるコトに。






「お待たせしました。」


悪取は獲物を洞に置き、明と仲良く社へ。


「津久間神より言伝ことづてを預かって参りました。」


蜷局とぐろをシュッと巻き直し、ペコリ。


津久間神は緑を司る神で、人の絶望から現れ出られた。強面こわもて禍津日神まがつひのかみっぽいが、直日神なおびのかみで在らせられる。


ちなみに使わしめ緑は、草蛇のおにデス。



津久間の統べる地は中の東国の西端に位置し、北はおそれ山の統べる地、南は海に面している。


東は大貝山の統べる地、西は真中まなか七国ななくに。・・・・・・西側は閉ざし続けたかった。案の定、開いたら押し寄せました。


もう嫌、閉ざしたい!



「津久間の地に、新たな合いの子が?」


「はい。それもポコポコ、次から次に。」


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