5-18 釈放。ただし、監視付き
「ちょっと、何これ。」
セイの前には、洗い物が。
「ちょっと、何なのよ。」
ヒサの前には、繕い物が。
「なにも何も。オマエたちに割り当てられた事だ。」
「はぁ? 多すぎ。減らしてよ。」
「そうそう。こんなの、ヒドイ。」
「仕置場に戻るか。」
ツルの低い声が響く。社の司だが、元は狩り人。強い。小娘など、手も足も出ない。
「やればいいんでしょう。」
「やってやるわよ。」
どこまでも偉そうなセイとヒサ。そんな二人を見張るのは、ゴロゴロ。
雲井神の使わしめ、自ら見張るなど、前代未聞。コンもキラも驚いた。しかし、理由があった。二人とも、こじらせているのだ。
いつまでも獄に繋いでおけない。だから放った。しかし、やらかす。必ず。だから、見張りが付いた。人だけではなく、妖怪まで。
「フクさま。宜しいでしょうか。」
「なあに、サエ。」
「来る月、セイが十二になります。」
「あぁぁぁ。そうだったわね。」
頭を抱えた。十二は成年、試み村で暮らす。しかし、セイは・・・・・・何も出来ない。このままでは、社で下働き? それは、困る。
今、雲井社には、ツウとコウがいる。あの子たちに何かあれば。考えたくない。あぁ、神様。
「フクさま。気持ちは分かります。分かりますが、祈りを捧げるのは、後にして下さい。」
「そうよね。今は、いま、は・・・・・・。」
「フクさま? だ、誰か。」
考えなければ。セイがいなくなればヒサが、子の家を仕切ろうとする。
セイもヒサも歪んでいる。が、ヒサの歪み方はひどい。すべてにおいて、やり方を選ばない。セイを隠れ蓑に、悪の限りを尽くす。
子のすることだ。知れている。とはいえ、年々酷くなっている。このままでは、死ぬ者が出るかもしれない。
分かっている。分かってはいる。それでも、どうすれば?
「フク、アレを捨てろ。」
「ゴロゴロさま。」
「気づいているだろう。ツウを害する気だ。」
「それは・・・・・・。」
「ツウに何かあれば、コウは戻るぞ。ツウを連れて、釜戸山へ。いいのか、祝辺の守が。」
「や、やめて。聞きたくない。」
「フクさま?」
「何でもないわ。ありがとう。」
妖怪が見張っている。何も出来ないし、させない。




