表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
904/1586

10-32 力の解放


また来た。真中まなか七国ななくには『耶万やまの夢』で人が減り、つわものを送るドコロでは無いハズなのにナゼ。


海から松川に入り、流れに逆らう。兵の目は血走り、歯を見せている。妖怪では無い、合いの子でも無い人。なのに何だ、あの荒々しさは。


獣のようによだれを垂らし、ギラギラしている。






「毒を強めたか。」


毒も使いようで薬になる。考えなしに用いれば、人を壊す事も出来る。


早稲わさは昔から積み重ねているが、真似まねて使えば人を獣に変えるだろう。ソレを知っているから風見かぜみは、あの早稲と結んだ。


『耶万の夢』を使えるモノにしたのは早稲。ソレを強めたのが耶万。


「松毒。」


『耶万の夢』より使えるモノを作り出そうと、いろいろな草、毒を集めた。松田は滅ぼした里や村、国の人を奴婢ぬひにして試す。そうして出来たのが『松毒』。


散蒔ばらまく前に滅んだから、どうなるのか分からない。けれど似ている。やまいぬの里を襲ったヤツら、涎を垂らないダケで同じ目をしていた。


「片付けよう。」


墓を掘り起し、むくろを穢すようなヤツらが作ったんだ。良い品であるワケが無い。燃やすか、押し寄せる兵に使うか。


「迷うな悪取あとり。民を、明里あかりを守れ。」


『獣の力』で見聞きし、敵を知る。『悪取の力』で糸を伸ばし、兵の足裏から『滅びの力』をタップリ注ぐ。


松田で飼っている合いの子が気が付いた。嬉しそうに跳ね、両手を地につけ駆ける。




「あぁん。」


人でなくなった兵に飛び掛かり、ガブリ。


血潮を浴びて狂い叫ぶ兵が、他の兵に襲い掛かる。襲われた兵は他の兵を襲い、また他の兵が襲われた。血の雨が降り、踏まれた骸に足を取られる。


ビシャビシャねっとり、ビチャビチャどろり。


「おや。」


兵を食らった合いの子が叫びながら、おのの尾を追う犬のように回り出した。コレはマズイ。



新しいタプタプ袋を作り、鼻先にプランと下げる。


ドロンとした目で飛び上がり、笑いながらドボン。毒を食らった合いの子が全て、幸せそうな顔でけてゆく。


ソレを見た生き残りが救いを求め、袋を剣で切り付けた。


「ギァッ。」


あの毒は合いの子を通して、毒を強めたらしい。タプタプにスッと融け、肉や骨を溶かす水に変わる。ほんの少しでも掛かればジュッと、体に穴が開く。


死にたがる兵がザシュザシュ切って、生き残りに掛ける。



『死の水』がバシャッと広がり、転がる骸から煙があがった。鼻が曲がるホド臭いソレに耐えきれず、獣たちが泣きそうな顔で訴える。


「ありがとう。」


『獣の力』を解くとタッタカ、スッと離れた。






「さて、と。」


明里から松田に飛び、舟の中でガタガタ震えている兵頭を捕らえる。


生き残りは十人ほど。怯えた目をしているが涎は垂らしてイナイので、毒を飲まされなかったのだろう。


「よく聞け。私は悪取、この地におにの国を建てた。引け、そして伝えろ。『大国おおくにだろうが何だろうが、敵と見做みなせば消す』と。」


ジョワァ。


「漏らすホド怖いか、恐ろしいか。」


目が左右に動き、歯はカチカチ鳴っている。


この地にバケモノが居る事は伝わるだろうが、また兵を送り込まれると困るんだ。子らが漁に出られない。


「答えろ。ドコから来た、七国か。」


コクッ、コクコク。


「『答えろ』と言ったハズだ。」


「ひゃい。なっなくに、の。ゴクン。ここっ、剛国こうのくに。」


真中の七国、中の西国にしくに寄りの大国である。


「お、なじく。ゴクン。しっ、倭国しずのくに。」


コチラは中の東国ひがしくに寄り。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ