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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
903/1585

10-31 お話します


エッ、どうして。


捨てられるのは知っていた、気付いていた。でも少し待てば大きな舟が届いて、加津の国守が津久間まで。




「良く聞くんだシシ、イコ、ムツ、ナヲ。父も母も死んだ。四妖とも明里あかりの子だ、私が引き取り育てる。明里で生まれ、明里で死ぬ。他の地へ引っ越す事も、迎えられる事も無い。」


ゴクリ。


「人と暮らせるのは、妖怪の国守に引き取られた合いの子だけ。私はおにで妖怪では無い。この地に妖怪の国守は居ない。」


ウルウル。


「血の繋がりは無くても私が親だ。良いかシシ、イコ、ムツ、ナヲ。しっかり学んで強くなれ。人と同じ時を生きるんだ、人を守れる力を身に付けろ。」


四妖が見合い、力強く頷いた。






八人の死と、シシたちに伝えられた事を知らされたのは朝餉の後。ヤンチャ四妖が静かなのは、親の姿が見えないからだと思っていたが違った。


舟を盗んで戻ろうとした? なぜ待てなかったの。耶万やまから大きな舟が運ばれてくる。少し待てば、津久間へ運んでもらえた。なのにナゼ。




「ねぇカハ。私、考えたんだけど。」


「なぁに、ヒシ。」


「明里にやまいぬの里の、壊されたやしろが在るんですって。アサから聞いたのよ。悪取あとり様は隠で、神では無いって。」


「・・・・・・そう、だったのね。」



祝の力なんて無いのに、なぜ御姿が。ずっと解らなかった。でも、そう。そうだったの。


神は人の望みから現れ出られる。祝女はふりめだった婆さまが教えてくれた。『悪取様を神に』と私たちが望めば、神に御為り遊ばすのかな。



「浦辺から明里は遠いけれど、チカに頼めば運んでくれるって。」


「アサから詳しい話を聞きましょう。幾らチカが力持ちでも、ヒシや私を運ぶのは疲れるハズ。子でも良いなら、子に頼みましょう。」


「そうね。というコトよ、アサ。」


「はい、お話します。」


シシたち四妖を押さえられるのはアサ、ハヤ、チカだけ。ハヤとチカが目を光らせているが、早く纏めた方が良いだろう。そう考え、ジッと待っていた。


盗み聞きしていたのではナイ。






犲の里。その真中まなかに在る石積みの社、御犬社おいぬのやしろは松田に壊されバラバラになった。悪取様とあけみさまは家ではなく、社の横に生えているははその洞で御暮らしだ。


もし人の手で組み直され、悪取様を神にと願えば悪取社あとりのやしろとなり、他の社と遣り取り出来るらしい。



聞くトコロによると千砂社ちさのやしろ加津社かづのやしろに加え会岐社あきのやしろ大石社おおいいのやしろ腰麻社こしまのやしろとも結び、行き来できる。


耶万社やまのやしろと声の遣り取りが出来るトカ。


その結びに悪取社も加われば、悪いのが押し寄せても助け合える。明さまが千砂や加津まで走らなくても、明里へ飛んで社を通せば良い。



人の手でなら子でも良い。


ウミに話したら、『大人の許し無く行うのは良くない』と言われた。だからヒシに話し、大人の考えを聞こうと。




「良く解ったわ。ウミの言う通り、これは皆で話し合い、決めなければイケナイ事よ。」


カハが言い切り、ヒシが頷く。






「良い話じゃない。ねぇ、ユウ。」


「メイの言う通り、良い話だと思う。偉いぞ、ウミ。」


大人を巻き込んで進めなければイケナイ話だと、流される事なく言い切ったせがれを褒める。ウミは父に褒められ、チョッピリ照れた。


「スサも手伝うよ。」


カハを見上げ、『褒めて』と目で訴える。


「ヒサも手伝う。」


ヒシを見上げ、ウルウル。


スサもヒサも抱きしめられ、嬉しそう。俯いた四妖の手をアサたちが握り、優しく微笑んだ。


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