1-9 恭順せよ
「第一追跡隊、全滅。」
なぜだ。出発当日、転移の才を持つスイ。翌日、収容の才を持つサイ。翌々日、拘束の才を持つディ。
「何があった。たった三日だ。西で、何があった。」
化け王を疑った。しかし、離れすぎてる。ヤツには、遠距離移動を可能にする才はない。いや、隠し持っていたら。
「化け王の城を捜索せよ。遠距離移動を可能にする、何かが隠されている。」
やっと気づきやがった。さあ、来い。奪ってやる。
「報告します。」
フンッ。化け王ごとき小物に、負けるわけがない。追跡するふりをして、隠れていたんだろう。愚か者め。
「全滅?な、何があった。」
思わず、叫んだ。全員が猛者だ。なのに。
「化け王城内。一班、離宮。二班、塔を捜索。」
離宮、異常なし。報告を受け疑問を抱いた。塔には隠れる場所がない。離宮より時間がかかるなど、有り得ない。地下に何かあるのか。命令した。塔を探せと。
「塔内にて、死亡確認。」
「ヤツを呼べ。」
「誰か、いないのか。」
「いませんよ。」
「で、出てこい。」
「目の前にいますよ、父上。」
「ば、バケモノ。」
「はい。化け王です。」
「娘は、無事か。」
「ん。」
「アン王女は、無事か。」
「あぁぁあ、生きてるよ。サンも。」
「た、助けて。」
「どちらを。」
「娘を。」
「恭順せよ。」
「お、王子たちも。ウィ王女も。」
「いいだろう。邪魔をしない限り、な。」
「父上、何があったのですか。」
城内に、誰もいない。思えば、揃って視察など。
「忘れろ、エド。」
「母上は。」
「忘れるんだ。」
「忘れる。何を、何を忘れろと。」
「すべて。ジャド、ベン、ウィも。良いな。」
「カーですね。あのバケモノ。」
「やめなさい。」
急いで止めた。
「なぜ、なぜですか。回復、強要、破壊、反射。これだけ揃えば、勝てます。」
「化け王には、誰も勝てない。炎の才がある。」
「そんなモノ、反射の才で。」
「わからないか。娘よ。」
「何です。」
「城内の、物は残った。他は、一瞬で。」
「一瞬で、何です。」
「消えた。」
「まさか、そんなことが。」
「化け王とは、そういう王だ。」
死なせるわけには。国を守らなければ。次代の大王へ繋がなければ。そのために。王子三人、王女二人。城下には、残った臣下がいる。少ないが、十分だ。
「化け王に逆らうな。良いな。」
生きてくれ。頼む。