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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
明里編
896/1585

10-24 その前に先ず


なぜ、なぜだ。


山のようにある国を一つに纏め、強い国にしなければ滅ぶ。海の向こうから攻められ、滅ぼされてしまう。だから我らは力を合わせ、強く豊かな国を建てる。


そうしなければ生き残れない!




「出せ、ここから出せ。」


ガンガン。


「黙れ。真中まなかのドコから来た、ドコへ行く。言え。」


会牧あまぎおさつわものに問う。


長は元、きこり。前の長に乞われて新しい長になった。生まれは津久間の西、海沿い。飛国とのくにに滅ぼされた里の生き残り。


「ハッ、知ってどうする。」


嵐で食べ物を失った兵の生き残りが、鼻で笑って睨みつける。ひとやに放り込まれているのに、おのとらわれ人だと解ってイナイようだ。


「飲まず食わずで二つ夜を明かしても、ちっとも草臥くたびれない。もう殺そう。」


サラッと恐ろしい事を言う浦頭うらがしらも、飛国に滅ぼされた里の生き残り。兄と共に他の子と舟に放り込まれ、海の上を漂い流れて会牧へ。


「殺すのは良いが、片付けがなぁ。」


ポリポリ。


「ナッ、人で無し!」


「テメェに言われたかねぇよ。ヨシ決めた、バラす。」


使い慣れたおのを手に、長がニヤリと笑みを浮かべる。


「タタッ、助けっ。」



シュッと矢が頬をかすめ、獄の後ろに生える木にトスッ。


獄の多くは洞穴ほらあなに作るが、会牧の獄は森の中。大きな獣に潰されてもオカシクない、そんな感じ。他の獄は壊され、中にいた兵が生きたまま食い殺された。



「残り一つ。放っておけば獣が片付け、静かになる。」


狩頭は保国たもつくにに滅ぼされた、津久間の西にあった里の生き残り。助けを求めて山の中を彷徨い、川に落ちて海まで流される。


海の上を漂い流れる舟に救われ、共に会牧に救われた。


「まっ、待ってくれ。」


長も浦頭も狩頭も、真中の七国ななくにに滅ぼされた里の生き残り。会牧に流れ着いたのだ、飛国か保国たもつくにの兵だろう。


サッサと問いに答えれば、葬るツモリだったのに。


「オレたち、倭国しずのくにから来ました。真中の七国は山に囲まれ、獣が多い。当たり前のようにいくさ、戦で血腥ちなまぐさいんです。」


「だろうな。」


浦頭、低い声で一言。


むくろついばむ烏が群がり、人が焼けた匂いが立ちめる。アチコチでやまいが流れ、食べ物も少ない。」


「で?」


狩頭が見下す。


「おなかいっぱい食べるなんて、夢のまた夢なんです。」


「だから?」


長の目がスゥっと細くなった。


「・・・・・・だ、から。」



手っ取り早く津久間の里や村を襲い、食べ物や女を奪った。


生き残りが里を村に、村を国に変え守りを固める。それでも仕掛けて奪いまくったが、難しくなってきたんだ。


中の西国にしくにも戦、戦。だから南国みなのくにを目指したのに、ちっとも勝てない。それで中の東国ひがしくにへ。



「海の向こうから兵が押し寄せる。そうなれば、分かるだろう。オレたちは国を纏め、生き残りを」


「その前にず、真中の七国を一つに纏めろ。」


そう言って振り降ろされた斧が、兵のひたいをガンと割った。ビシャッと血が噴き、他の兵に降り注ぐ。死んではイナイ。骨が折れ、凹んだダケ。


そのうち死ぬだろう。


「ひ、ひっ、人殺し。」


「フッ、それがドウした。オレは長、皆を守り戦うのが務め。この二人もな。」


浦頭と狩頭がニヤリと笑った。




会牧は津久間の東、火の山島やまじまに守られている国。で湯が多く、とても豊か。なのに会牧で生まれ育った人は少ない。


舟で他と繋がっているので飢える事は無いが、田や畑を作るのが難しいから。


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