10-6 調査に御協力ください
鎮の西国、中の西国、真中の七国でボコボコ生まれる、人と妖怪の子。
親から引き離せず、食らった合いの子は捨てられる。捨てられた合いの子が子を生し、すり抜け暴れ、人を襲う。
鎮の西国と鎮の東国は海に囲まれているが、残りは陸続き。
真中の七国の西は中の西国、東は中の東国、南には南国。南国も中の東国も、妖怪の国守を境に向かわせ防いでいる。
けれど広く、幾ら強くても直ぐに動けない。
南国は稜見と猪瀬、中の東国は斑毛山と津久間の境で増えている。
北の海は荒く、恐ろしいのか漕ぎ出さないようだ。南も荒れているが慣れているのだろう。飛国からドッと、舟で。
「人と妖怪の合いの子、その扱いなど、社を通して広く伝えられている。加えてヨヨが先見した事も千砂神の使わしめ、蜜が悪取に伝えた。」
大蛇神、キリリ。
「明里は千砂と結んだのですか?」
水引神、ニッコリ。
「人が行き来する事は無い。妖怪の国守が力を貸すが、悪取の力は他とは違う。二つの闇の力に、悪しきモノを奪う力が合わさった。加えて、もう一つ。」
「悪しいモノを消して、無くす力ですね。」
集水神、クワッ。
「人を救い、守る隠になると良いですね。」
誘神、ニコニコ。
「悪取は人の世に隠の国を建て、他では生きられぬ者を守り導く。隠の世が開くまで。」
悪取は旧松田領に罠を張り巡らせ、片付けを始める。
水際にも糸を張り、守りを固めた。アチコチにタプタプ袋を仕掛け、搦め捕った悪しいモノを逃さず融かす。
悪取が生きている限り、明里が闇に呑まれる事は無い。
明は犲の隠だが、人に姿を見せられる。言の葉も話せる。四つ足なので火を扱ったり、水を汲んだりは出来ないが寄り添い、心を支えるだろう。
明里に迎えた人に強く望まれ、人の手で社が建てられれば神となる。そうなれば隠の世が開いても人の世に留まり、力を揮い続けるカモしれない。
そうなれば人の世に隠神が、ん? 良いではナイか。
「真中の七国と中の東国の境に、妖怪の国守が集められたが悪取は隠。妖怪では無い。」
真中の七国から山を越え、津久間に入った悪しいモノ。罪の無い人を傷つけ、追い詰めるのだ。捨て置けぬ。
悪取が加わればサクサク狩れるだろうが隠の国、明里王である。送り込むのは難しい。
新たな合いの子は見分けるのが難しく、通してしまう。陸から行けなくても海はガラ空き。人のフリをして海に出て、津久間に入るのが出てきた。
津久間の人を傷つけたのは、そういうヤツら。
「強い力を持っているとはいえ、隠に出来た事。」
「出来る事は限られるが、力を尽くそう。」
「呼び寄せる気は無いが、入れば奪える。」
「死を願う者から闇を奪い、帰せば良いのだ。」
「ウム、それは良い。」
「人の世の神へ、使いを出すか。」
「狭間に押し付ければ良いと、考えねば良いが。」
「丸ごと、投げ為さるだろうなぁ。」
集い座した狭間の守神、揃って溜息。
当たり前のように丸投げし、ナアナアで済ませ為さる。そんな神が幾柱も御坐すのだ。溜息の一つも吐きたくなる。
「良那のヨシのように、闇を受け継いだ人。」
「人と妖怪の間に、人として生まれた者が他にも。」
「居ろうな。」
今のところ、そのような闇は見当たらない。けれど必ず、どこかで生きている。
言えないような事をするヒトデナシ。奪う事で『生きている』と感じるヒトデナシ。生まれつきのワルもアヤシイ。
調べてほしいと持ち込まれる闇は、そう多くない。闇を切り取る前に清めてしまうから。
「統べる神から、統べる地の神に告げ知らせを。」