9-84 代替わり、為さいますか?
代替わりの儀により、大貝神が御隠れ遊ばす。それから六月の後、大貝社。
「ココ、どきょ?」
コテンと首を傾げ、パチクリ。
「大貝社で御座います。大貝神。」
使わしめ、土が微笑む。
「うむっ。」
ふわふわマシュマロボディで踏ん反り返る御姿に、社の皆メロメロ。
「私は使わしめ、土と申します。」
涙を流しながら微笑む。
「つち? 土ぃ。」
ガバッと抱きつき、スリスリ。
ゆれる稲穂のように美しく、優しい光に包まれて現れ出られた。その御姿は幼く真っ新。そんな神を慈しみ育て、教え導くのは使わしめ土。
どんなに苦しくても、難しくても丸投げせず、統べる神として務めを果たす。そんな神に御育てせねば。
何でもカンでも背負い込む事は無いが、代替わりを迫られぬようシッカリと。
早ければ三日、長くとも三月で現れ出られるハズなのに、六月も経って・・・・・・やっと現れ出られた。土は嬉しゅう御座います。
強面でも良い、逞しく育ってほしい。
「大国主神。務め、果たされませ。」
使わしめ稻羽、後ろ足をタシタシ。
「ウム。では瓢に」
「ナリマセヌ。」
クワッ。
大貝神の代替わりは、中つ国を震撼させる。
いつだって他力本願。当たり前のように丸投げし、無責任と適当を標準装備。それでも何とかナッテイタ。だから、ナアナアで済ませるモノだと・・・・・・。
胸に手を当てずとも、思い当たるフシがある。そんな神がゴォロゴロ御坐す。となると、お次は?
「鎮の西国で暮らすとはいえ、異なる国の民。やまとのアレコレは、やまとの神が収めねば。」
神代の出雲国の主神、大国主神。
天照大御神の命に従って、国土を天孫に献上し退隠。他はサテオキ、出雲の御隠居様は現役バリバリ。隠居番頭ならぬ隠居国つ神、生涯現役!
優雅な隠居生活とは無縁なのデス。
「ソウは言うても、稻羽。」
「代替わり、為さいますか?」
使わしめ、サラリと神を脅す。
「ヒッ。」
大国主神、稻羽の猛烈な攻撃にタジタジ。
大貝神が御隠れ遊ばし、代替わりに六月も掛かった。もし私が。その時は一年、いや三年は掛かろう。
大貝山の統べる地が乱れる事なく清らであったのは、数多の神神がアレコレ為さり、守り抜かれたから。
彼の地の西には津久間の地、津久間神。北西には畏れ山の地、火炎神。北には霧雲山の地、山守神。東には具志古の地、具志古神。
大貝山の統べる地では早稲神、殺神、耶万神の三柱が御力を揮われる。
「稻羽。もし、もしも私が。その、何だ。」
「因幡の地は八上比売、出雲の地は木俣神が速やかに御力を揮われるでしょう。他の地は、フフフ。」
正妻は須勢理毘売ですが、先妻は八上比売。我が子を残したのは、出雲の地を守るため。
因幡に足を向けて寝られませんよ。
「さぁて、私は代替わりに備えて。」
「稻羽ぁ、見捨てないで。」
「ではサクサク、キリキリ働いてください。」
「・・・・・・はい。」
悪しきモノは今日も海を越え、やまとにドッと持ち込まれる。闇喰らいの品は消滅可能、叢闇の品は無力化するのが精一杯。今のところは。
光芒により注がれた恵みは中つ国を蝕む悪を清め、実りを齎す。いつまで続くか? ソレは人の世で暮らす、全ての生き物の行い次第デス。
光芒編でした。
明里編に続きます。お楽しみに!