9-83 そして、伝説となった
闇喰らいの力は感じるのに、叢闇の力は感じられない。ソレどころか消えた。叢闇鏡と叢闇珠は一つになり、叢闇剣を求めて耶万へ。
その後は?
「聞いたか。海を越えてきた闇喰らいの品が、吹出山に納められたらしい。」
「吹出山って中の東国にある、あの吹出山か。」
「あぁ、その吹出山だ。」
小ぶりな山が三つ連なり、黄泉平坂に繋がっている。山に許し無く入れば、サッと根の国へ送り込む。
人の世の外れにある獄は入れ替わりが激しく、いつもイッパイ。新しいのが入る度、古いのが居なくなるトカなんトカ。
「吹出山の頂に建てられた社。その中に納められている品を手にすれば、大いなる力を得られる。」
ゴクリ。
「濃く深い闇を纏い、好きに暴れられる。」
ゴクリ。
「欲しい。」
ゾロゾロぞろぞろ、ゾォロぞろ。やまと人の世に暮らす悪しきモノ、止せば良いのに吹出山へ。
「妖怪が多いなぁ。」
まっ、そうなると思ってたケドね。
「人も混じってるね。」
育った合いの子か。
「闇に呑まれて心を捨てたり、歪めた人も居るよ。」
あらヤだ。
「長、どうします?」
「寄り道せず、真っ直ぐ向かえばソレで良い。」
キリッ。
妖怪の国守を支えるため、使わしめが立ち上がった。
穏やかに和やかに暮らす人に狙いを定めれば、直ぐに捕まり祓われる。神の御坐す地を通れば、漏れ無く清められキラリ。
何も知らない、気づかない妖怪は人の世から、サササと消えて無くなる。わぁい!
悪しきモノの多くが海から、大磯川を上がって来た。
ナゼって、そりゃね。『魂を抜かれるか闇の力で殺されるか、どちらか好きなのを選べ』なんて言われて、ウキウキする妖怪はイナイよ。
白い森を抜けようとすると、スッと魂が抜かれる。加津を抜けようと近づけば直ぐ、鋭い闇で貫かれ死ぬ。手前にある千砂に近づけば直ぐ、ギザギザの闇に打っ手切られる。
ゾゾッとするでしょう?
「人は吹出社、妖怪と合いの子は獄に入れる。良いな。」
黒狼ズ、コクリ。
「皆、かかれぇ!」
「オォォン。」 ハァァイ。
目をギンギラ輝かせ、力を求める悪しきモノ。続続と吹出山に詰めかける。様様な刺激を受け、感情が高ぶりオラオラ。
我こそは!と思うモノが一歩、また一歩前へ。
・・・・・・あっれぇぇ、オカシイぞぉ。
山に烏が多いのは当たり前。けどね、鷲や鷹ならイザ知らず、人を掴んで飛びますか? いいえ飛べません。なぜなら、烏だから。
どう見ても烏だよね。『カァカァ』鳴いてるもん、烏だよ。鳶よろしく急降下、かぁらぁのぉガシッ。吹出社まで飛んで、上空からポトッ。
ヒュゥン、ピッカァ。浄化完了。
・・・・・・あっれぇぇ、オカシイぞぉ。
悪しき妖怪、消えてゆく。バンババばんばん消えてゆく。何も無かった地が抜けて、ヒュゥンストンと落とされた。
ココはドコ、ワタシはダレと騒いでも、助けは来ないし出られない。シュゥン、ペッカァ。処刑完了♪
叢闇の品は伝説のアイテムとして広く、広く語り継がれた。吹出山の頂に御坐す神は、妖怪をペロリと食らい為さるとも。
そんなのデタラメ、空っぽヨ。