9-67 怒り心頭に発する
加津での神議りで、大祓の儀を執り行う事が決まった。急ぎロロが一山へ飛び、人の世から隠の世へ。
和山社で御許しをいただき、加津に戻る。
大蛇神は急ぎ、根の国と天つ国へ。大祓の御許しをいただき、蜉蝣神の御元へ。蜉蝣神は使い隠、浮を加津社へ向かわせ為さった。
加津に三柱、国守が三妖。・・・・・・逃げよう。
「ん、んん?」
動けない、ハッ。腰麻の祝がナゼ、加津に。
祝は里や村、国から出ない。妖怪の祝は出られるが、妖怪の国守にガッチリ守られる。腰麻に妖怪の国守は居ないから、祝であるユキが出る事は無いハズ。
ユキには闇を刃に変え、鞭のように自在に操る力が有る。光の力は失ったが、祝の力は残っている。つまり、その気になれば神をも。
「まっ待て、早まるな。こレでは話ガ、出来ぬ。」
三柱ともナゼ止めぬ、諭さぬ。妖怪とはいえ祝が、国つ神を傷つけようと、して居るの、だぞっ。
「大貝山の統べる地で、残るは。」
加津神、ニッコリ。
「白い森の北は、私が清めました。その北は早稲神と風見神、一山の北は大倉神と大稲神が御調べに。」
耶万神、ニコニコ。
「となると松田の縄張りと、西端の南の地。」
千砂神、ニコリンコ。
・・・・・・あれ、アレあれアレ。ニコニコにこにこ、ニッコニコではないか! というコトは、アレか。アレなのか。そうなのか。
「西端の南の地は里も、村も国も無い。松田のアレコレが片付いてから、ゆっくり調べましょう。」
加津神、ニッコォ。
「では白い森の南。松田の縄張りだった地は、大貝神に御頼みしましょう。」
千砂神、ニッコォォ。
「あの地を扱えるのは一柱。直日神で在らせられる、大貝神のみ。」
耶万神、ニッコォォォ。
・・・・・・あれ、アレあれアレ。コレはアレか。アレなのか。いや違う、押し付けねば。
「国つ神は見守るのみ。ココは妖怪の国守、ミカに。」
チラッ。
「お断りします。」
キリッ。
「祝は人でも妖怪でも守らねばならぬ。が、妖怪の国守は戦うために居る。命を惜しむな。」
ナニイッテンノ。
「私が死ねばイイを。引き取った合いの子を、誰が育てるのでしょうか。」
「他に妖怪が居らねば、祝に引き取らせる。」
ナニイッテヤガル。
「人と妖怪の合いの子です。きっと人より長く、長く生きるでしょう。あやした嬰児が育ち、老い、看取る。それを繰り返す合いの子の気持ちが解りますか。少しでも御考え遊ばしましたか、大貝神。」
「フン。人と妖怪は違うのだ、何の障りも無い。」
ナンダト。
ミカだけじゃない。フタ、モト、クベも激しく怒る。守りたい人を守れず、妖怪になったのだ。もう失いたくない、傷つけたくない。そう強く思っている。
血の繋がりは無くても親。ミイもヨヨもイイもムゥも、幼児に見えるが嬰児。親が居なければ生きられない。
なのに、それなのに一人しか居ない親に、子を残して死ねと仰るか!