9-66 これはマズイぞ、逃げられない
『統べる地を調べ直し、見つけた闇喰らいの品、一つ残らず清めよ』
大蛇神の仰せである。聞かなかった事にも、突っぱねる事も出来ない。
「おぉ、そうだ。」
拳で掌をポンと打たれ、大貝神。ニッカァ。
「恐れながら申し上げます。神、御自ら」
「いや土、良い考えを思いついたのだ。」
聞きたくナイ。
「妖怪の国守に押しつけ、コホン。任せようと思う。」
・・・・・・ハァ。
長瀬山の悪夢、再び。
なんてコトになる前に、調べに行きましょうよ。大貝山の統べる地、丸ごと調べ直すワケじゃないの。まだ調べていない、残された地を調べるダケ。
管理職なんだから丸投げせず、キチンと管理して。責任を持って行動しようよ、責任者なんだからさ。
「妖怪の国守、千砂より加津が良かろう。戦いながら守れると聞いた。」
マタデスカ。
「浦辺からも近く、闇に強い。」
コマッタ、ドウシヨウ。
大貝山に比べれば近いですが、そこそこ離れてマス。
闇の力が有っても、闇に強いとは限りません。それに何より、国守が守るのは生まれ育った地。千砂の国守なら千砂、加津の国守なら加津を守ります。
もし、もしも。いや止そう。考えちゃイケナイ、その通りになる。怯まずキチンと、ハッキリお伝えせねば。
「大貝神。よく、よぉく御考えください。」
グイ、ググイ。
「よく考えて決めた事。」
ハァ。イカン、挫けるな!
「ウンと言うでしょうか。」
ジィィ。
「喜んで引き受けるだろう。」
「それはアリマセン。御考え直しくださいって、あれぇ?」
思い立ったら突っ走る、走りだしたら止まらない。御目を輝かせ大貝神、ルンルンで加津へ。残された使わしめ、遠くを見つめてガックリ。
「これは大貝神。」
アレッ。
「今、使いを出そうと。」
アレレ。
「お気づきでしたか。」
アレレレレ。
・・・・・・いや、その、違う。違います。やっ、止めて。そんな目で見ないで。丸投げ、じゃなくて何だっけ。そう、任せようと思って、ね・・・・・・。
マズイ。これはマズイぞ、逃げられない。ってかナゼ千砂神と耶万神が。ん? 使い隠まで。ゴクリ。あの蜉蝣、側仕えじゃないかぁぁぁ!
「ロロ、国守を呼んできておくれ。」
加津神、ニコッ。
「はい。」
使わしめ、ニコッ。
ロロは鳶の妖怪。トットと助走して、社を出ると当時に飛び立った。で、直ぐ戻る。
「お待たせしました。」
妖怪の国守ず、ニコニコにっこり。