9-62 緊急会議
失敗を押しつけ手柄は横取り。責任を取らない責任者、働かない管理職なんて要らない。
「代替わりを。」
冷たい御声で大蛇神。
「そっ、そのような。」
慌て為さる大貝神。
叢闇鏡も叢闇珠も神庫に納められた。残るは吹出山に空の神庫を建てる事。使い隠より妖怪、それも国守が良いだろう。
サッサと終わらせたいが、その前に。
「統べる地を調べ直し、見つけた闇喰らいの品、一つ残らず清めよ。」
残らずって、広いよ?
「良いな。」
「・・・・・・ハイ。」
としか言えません。
『どの神に丸投げしようか』なんて事を考えながら、御帰り遊ばす大貝神。
なぜ分かるのかって? バレバレですよ。ブツブツ仰ってマスから。
話を聞いた妖怪の国守、揃ってゲッソリ。加津神と使わしめロロ、仲良くアングリ。隠の世に戻る蜉蝣神の使い隠、浮は思った。『お気の毒に』と。
「ロロ。急ぎ千砂社と、耶万社へ飛んでおくれ。」
「はい。」
松田に滅ぼされた浦辺に近いのは、加津社と千砂社。松田を滅ぼしたのは耶万だから、耶万社へも。
大貝社から使いが来る前に、三柱で議らねば。
「困った事になりそうですね。」
会岐の国守、フタが呟く。
「気になるのは、水を怖がる犬です。」
千砂の国守、モトが言い切る。
「飼われてたのか、捨てられたのか。」
大石の国守、クベがポツリ。
「松田に滅ぼされたのは国だけじゃない。里や村を入れたら、どんだけあるんだ?」
加津の国守、ミカが頭を抱える。
・・・・・・松田の辺りも探したって、ユキさん。北は白い森、南は海。西に椎の川、東に大磯川。広くて探すのに骨が折れたトカなんとか。
「なぁクベ、覚えてるかい。皆で腰麻に行った時、ユキさんから聞いた話。」
「死んだ国守、アキだっけ。己の闇を切り取って、娘さんに植えた。」
「そうだ。松田も調べたって、ユキさん。」
「あぁ、言ってた。怖いくらい獣が出たから、寝ずに探し回ったと。」
フタとモトが見合い、頷く。
話し合いに妖怪の祝ユキと、使い蛇のユラが加わった。光の中では生きられないユラは地に潜り、物影から出入りする闇蛇である。
「浦辺ではありませんが、隠れ里。」
ユラが何かを思い出した。
「うぅん、多すぎて。」
「ユキ、覚えてナイ? 犲の骨や、牙が飾られた家。」
「・・・・・・アッ、犲の里。」
滅ぼされたのは、ずっとずっと前。里の名は分からない。けれど、そう呼びたくなる里だった。
崩れ落ちた木組みに取り付けられた、いろんな形の美しい飾り。里や家を守っていたのだろう。そんな気がして、ソッと触れた事を思い出す。
柞の大木の横に、蹴り倒されたと思われる社が残っていた。
ずっと前に御隠れ遊ばしたのだろう。何も感じなかったが清らで、泣きたくなるほど苦しくなった。里は捨てられたのでは無く、滅ぼされてしまったのだ。
一人残らず殺されて・・・・・・。