9-60 助け合える
モヤモヤを見つけた? って、エッ。
「あのな、クベ。松田を調べに行ったモトとフタが外れ、というより川を渡った先。それも浦辺で、闇喰らいの品を見つけた。」
「浦辺って確か、松田に滅ぼされた国だよね。」
松田に滅ぼされた国の一つ。浦辺は強く、豊かな国だった。
仕掛けられても攻められても粘り続ける。ギリギリまで張り合い逆らい、諦めなかったのに・・・・・・。兵の数が違い過ぎたのだ。
残らず嬲り殺され、骸をグチャグチャにされる。中には生きたまま、獣に食われた者も。生き残りは居ない。
滅ぼされたと気づいたのは、加津の釣り人だった。
浦辺の舟を一隻も見ない。嫌な感じがして、見に行ったのだ。人の味を覚えた獣がウロウロと、アテも無く歩き回る。『近づけば襲われる』と思い、離れたと聞く。
付き合いが有った千砂と加津から、祝が出向く。と言っても海から舟で、浦に近づいたダケ。心を込めて『清めの儀』を執り行い、御魂を鎮めた。
「そうだ。人の味を覚えた獣が住みついて、離れようとしない。そんな地にな、残ってたんだ。」
「ミカさん。それって、もしかして。」
「西から来た兵が持ち込んだか、獣が襲った人から奪ったか。・・・・・・兵が持ち込んだ、と思う。アレを欲しがる獣なんか、いないさ。」
斧のようだが良く分からない。だから一度、千砂に持ち帰ろうとした。けれど直ぐ気づく。闇が強すぎて、千砂まで耐えられないと。
松田は戦好きで周りの里、村や国を滅ぼし続けた。だから近くに、神が御坐す地は無い。頼れるのは加津だけ。
悪い事は重なるモノで、人と妖怪の合いの子が狙っていた。アレは人を食らい、闇に呑まれた目。置いて行けば手に入れて、禍を齎すだろう。
竹筒に入れていた水を掛ける。ジュワッと音がして、ほんの少しだが清らになった。
モトのは千砂社、フタのは会岐社の清め水。加津の清め水には負けるが、無いよりは良い。
「加津に入る前に気づいたイイが、祝を背負って外れに走った。でな、清めようと触れたダケで消えて無くなったらしい。ジュワジュワと音を立てながら。」
「ってコトは。」
「ああ。直ぐに清められ、横になっている。」
「良かったぁ。」
大まかな事を急ぎ、大貝神に御伝えした加津神。慌て為さった大貝神は仰った。『和山社から御許しが出るまで、松田を調べるのは待ってほしい』と。
海を越えてきた禍を齎す品を、人の世から入れない神庫に納めるため、アチコチでイロイロなさって御出でだ。今、動けば障りが有る。
「ってコトは、えっ。」
「そうだ。あの剣と同じようなモノが、持ち込まれたってコトさ。」
耶万で見た、気持ち悪くなる剣。人だった時だ、何の力も無い。それでもアレはイケナイと判った。
一つしか無い? そんなワケない。他にも有ると思ったが、こんなに早く持ち込まれるとは思わなかった。
いや違う。ずっと前に持ち込まれ、ココまで運ばれたんだ。・・・・・・怖い恐ろしい、どうしよう。考えたダケで震えが止まらない。
「落ち着けクベ。オレたちは妖怪だ、助け合える。」
「そうだ、よね。ミカさん、モトさん、フタさん。祝の力を持つ、ユキさんも居る。」
「ああ、そうだ。皆で助け合い人を、国を守るんだ。」