9-59 悪い事が起きている
兵の骸を和邇に配り、殺社に戻ったミカとクベ。揃って何となく、西から嫌な感じがした。
「あ、あの・・・・・・。」
殺社の祝ハマに声を掛けられ、振り向いたミカとクベ。話すには離れていたので、近づく。
「来ないで!」
???
ハマは大の男嫌い。近海では知られた話だが、加津にいるミカと大石にいるクベは、そんなコト知らない。
声を掛けられ振り向くと、モジモジしだした。となれば、『何か話が』と思うだろう。
歩き出そうとしたダケなのに、『来ないで』と言われビックリ。顔を見合わせ、首を傾げる。
「社から何か?」
優しい声で、ミカが問うた。
「いえ、違います。松田を調べてください。」
「えっ。ミカさん、松田って確か。」
「あぁ。」
『西のを追い返したら、フタと共に調べる』そう、モトが言っていた。川の向こうで何か、悪い事が起きている気がすると。
千砂は川の近くにある豊かな国だ。川を渡る事は無いが、川に行く事は多い。で、見る。川向うに群れる獣を。
オカシイと思った千砂の人が、モトに急いで伝えた。調べようと思った時、大貝社から告げ知らされる。『闇喰らいの品を残らず清めよ』と。
川の向こうに村は無い、国も無い。すべて松田に滅ぼされた。
その松田は耶万に滅ぼされ、生き残りは居ない。皆、耶万の夢で死んだ。一人残らず殺された。今の松田は、悪いヤツらの隠れ家になっている。
「なぁクベ。マズイ事になってるんじゃナイか?」
「はい。急いで戻りましょう。」
「ミカさぁん。」
殺社を通って、加津社に戻ったミカとクベ。外に出るとイイが手を伸ばし、駆けて来た。屈んで、両手を広げたミカの胸に飛び込む。
「ただいま、イイ。」
優しく抱きしめ、ニッコリ。
「おかえりなさい、ミカさん。」
嬉しそうにスリスリ。
女の子はイイなぁ。ムゥだって嬉しそうに駆け寄って抱きつくケド、スリスリしない。ヨヨがスリスリしてるトコ、見たコトない。
ミイはイイと同じで・・・・・・。
そういえば姉さん、妹もスリスリしてたな。そっか、女の子は皆、スリスリするんだ。うんうん。
「クベさん?」
「何だい、イイ。」
「だからね、ヨヨがモトさんに言ったの。松田にね、闇が溢れるって。」
千砂の妖怪の国守、モトに引き取られた人と妖怪の合いの子、ヨヨ。闇に限られているが、先見の力がある。
「エッそれ、いつの話だい?」
幸せそうにスリスリするイイを見て、羨んでいる間に進んでいた話を聞き流していたクベ。ビックリ。
「千砂を出る、少し前に見たらしい。」
ミカが苦笑いしながら、そっと伝える。
会岐の妖怪の国守、フタに引き取られた合いの子、ミイも言ったのだ。『松田には行かないで』と。
心の声がドウコウではなくビビッと伝わるミイは、恐ろしくカンが鋭い。
「それでね、見つけたの。モヤモヤ。」