9-56 念には念を入れ
妖怪の国守、ミカとクベにより取り戻された品。叢闇珠と叢闇鏡が、殺社から大貝山へ運び込まれる。
「これはまた、シッカリとした。」
お手を触れず、シゲシゲと御覧になる大貝神。
「はい。真ん丸で、傷一つ有りません。」
八つの目を見開く、使わしめ土。
闇が入らないように二重になっていて、間に清めの水が入っている。闇は闇でも、妖怪の国守から切り出された闇。その辺りに漂っている闇とは大違い。
「加津と大石の国守が申して居りました。そのまま清めの糸で包んで、神庫に納めてほしいと。」
殺神の使わしめ、海布がニコリ。
「それは、なぜでしょう。」
「土さま。腰麻の国守だったアキが残した闇の種は、清めの力を持つ祝にしか扱えませんでした。合いの子は殺せても、残ったのです。」
腰麻の国守だったアキが、己の闇を娘たちに植え付けた。
人と妖怪の合いの子、他とは違う合いの子。胎の子は強い力を持ち賢く、耳が良い。いつ、誰が誰と、何を話したのか分かるホド。
その合いの子を闇に閉じ込め、殺したのが大石と加津、会岐と千砂の妖怪の国守と、腰麻の妖怪の祝の五妖。
残りを消して無くしたのは、加津の祝サハ。
「腰麻の合いの子と、叢闇の品が同じだと?」
「いいえ。その品、気付いて居ります。クベの闇の先に、清めの水が有ると。」
「なんと。」
アキが残した闇の種、育って出た壱弐参は怯えた。クベの闇は破れない。それでも出ようとして止めたのは、清めの水に浸かっていると気付いたから。
暴れて少しでも傷つけば、ドッと流れ込んでくる。アッと言う間に清められてしまう。それを恐れ、怯えたのだ。
国一つ覆い尽くして隈なく調べたり、形を変えて操ったり、縛ったまま遠くへ移したり出来るミカには分かる。捕らえた品が縮こまり、震えていると。
「闇の強さ、深さは違うが腰麻の合いの子、壱弐参と同じモノを感じた。だから違い無いと言い切ったのです。」
ズバッとね。
「そうか・・・・・・。」
ミカとクベが得た闇の力は、控え目に言って桁違い。
「切り取られたクベの闇は、クベが死ぬまで破けません。もし破れても、加津の清めの水に浸かるダケ。フフフ。」
塩を掛けられたナメクジ状態。身動き取れまセン。
「妖怪の国守が持つ闇の力は会岐神、大石神、加津神、千砂神。四柱が御調べ遊ばし、明らかです。」
耶万の神庫のように大貝社や、和山社まで糸を伸ばさずに済む。もし闇を破いても清めの糸は切れず、そのまま干乾びるのがオチ。
叢闇珠を納める雫湖の神庫も、叢闇鏡を納める蛇谷の神庫も、根の国からしか入れない。
中つ国と根の国は許し無く、行き来できない。どんなに強い力を持っていても、根の国から出られず朽ち果てる。
四柱が御調べ遊ばし、明らかに為さった事。覆る事は無い。それに加津の清め水は、驚くほど清ら。闇を清めも濁らない。
「土、このまま包めるか。」
「はい、大貝神。お任せください。」
キリッ。
お尻を振って・・・・・・ブワッ。クルクルクルゥ、シュッ。うん、イイ感じ。