5-10 頭痛の種
サエにも分かっている。出来ることなら、そうしたい。でも、出来ない。釜戸社から、押し付けぇっ、託された子です!
それにしても、なぜ? いくら惨いことがあったとしても、ここまで歪むでしょうか。持って生まれた、としか。
「ダイ。そんなこと、言ってはいけません。」
「そうよ、ダイ。いけないわ。」
「セイ! そもそも、あなたに割り当てられた事でしょう。なぜ、果たさないの。」
困りましたね。もうすぐ、稲田の子らが来ます。霧雲山の、祝辺の守を動かすほどの子が。山守社から、守るためでしょう。この二人から、離さなければ。
「セイ、ヒサ。あなたたち、どう生きる気なの。」
「どうって?」
「わからなぁぁい。」
この子たち。叱られていることに、気付かないのかしら。世の中を見縊っている。
釜戸山に戻せない? 強い、清めの力を持つ祝人が・・・・・・。確か、ナガ。清め、祓ってもらいましょう。そうしましょう。
「何を言い出すの、サエ。」
「フクさま。」
「セイもヒサも、人の子です。悪い何かに魅せられた、という類のモノでは。でも、ね。気持ちは、わかる。私も考えたもの。」
「フクさま?」
「ねぇ、サエ。とても骨の折れることでしょう。けれど、諦めないで。」
「出来る限り、尽くします。」
頭痛の種たちは、我が世の春を謳歌している。思えば、気の毒な子だ。セイもヒサも、親と共に早稲へ逃げ込んだ。その生き残りである。
歪みもする。歪まないほうが、おかしい。しかし、だからといって、何をしても許されるわけでは、ない。
二人は、別々に攫われた。いや、救われた。「早稲の他所の」人たちに。
目隠しされ、縛られたまま、釜戸山へ。暴れに暴れて、仕方なく。そう聞いている。
はじめ、日吉社に託された。けれど、一月もせず、返された。歪みすぎて、手に負えないと。
釜戸社は、大慌て。先代の祝が病で倒れ、エイが祝になったばかり。他に手立てがなく、仕置場に置いた。暴れに暴れたが、二月ほどで大人しくなった。
釜戸山では厳しい。だから、社をあげて受け入れ先を探した。しかし、見つからない。
山守社にまで断られ、仕方なく手を差し伸べたのが、雲井社だった。




