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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
光芒編
829/1585

9-41 出来る限り多くの子を


しづめ西国にしくに、中の西国、真中まなか七国ななくに。統べる地にて神神かみがみ、大パニック!


どど、どうする。闇喰らいの品が多すぎて、全て清められる気がシナイ。けれど、もし一つでも残せば? 考えたダケで恐ろしい。




稻羽いなば。いや、良い。」


杵築大社きづきのおおやしろにて、大国主神おおくにぬしのかみ


「出雲には多くの品が入ります。鎮の西国からも、真中の七国からも。」


大国主神の使わしめ、稻羽。サラリ。






外海そとうみから内海うちうみに入れば、荒波に飲まれる事なく行き来できる。だから集まる。海を越えてきた叢闇むらやみの品、やまとで作られた闇喰らいの品。


どんな品にも込められる作り手の思い。幸せを願えば、幸せを運ぶ品に。思いやりを持って作れば、優しい品に。恨み辛みをつければ、わざわいもたらす品に。



持つ者が闇に呑まれれば、良い品でも闇に染まる。闇喰らいの品は初めから、禍を齎すワケでは無い。人の手から手へ。多くの思いが流れ込み、染まってゆく。


人も物も同じ。光の中に居れば、明るく生き生きと。闇に踏み込めば暗く濁って、勢いを失ってしまう。



中の西国ダケでは無い。鎮の西国や真中の七国で出回っているソレは、濃く深い闇を纏っているのだ。






「さぁ着いた。」


もやくいに縄を掛け、タマを舟から降ろしたシゲ。マルコとシゲコがトタッと、舟を降りる。


「タマ。」


ノリの舟に乗って、少し前に着いたミヨが手を振った。足元でコハルが、大人しく座っている。



ミヨはやしろの司のめい、タマは祝の妹の娘。二人とも狙われやすい。


ミヨには心の声が聞こえるので、攫われる前に気が付く。タマは水を操って、人攫いを片づけられる。それでも無くならない。



言い出したのはナント、玉置の国長くにおさビビ。


死んだからと無かった事には出来ない。生き残った他のを釜戸社かまどのやしろに引き渡し、裁かれるまで二人を良村よいむらで預かる事になった。



「ワンッ。」 タダイマ。


舟寄せまで迎えに来たマルに駆け寄り、尾をフリフリ。優しく撫でられ、ウットリ。


「タマ、ミヨ。ひしゃしぶり。あえて、うれしぃ。」


マルコを撫でてから、ご挨拶。


「うん、マルゥ。」


泣きながらマルに抱きつくミヨ。タマはタエに抱きしめられ、涙を流す。






「そろそろ行こうか。」


シゲに声を掛けられ、子らがニッコリ。


「はい。」



タマはマル、ミヨはタエと手を繋ぐ。マルの横にはマルコ、タエの横にはコハル。シゲコは前、ノリコは後ろを歩き、子らを守りながら歩く。


シゲとノリは思い出す。北山から救い出され、釜戸山に居た四人の姿を。ガリガリに痩せていた姿を。


健やかになって良かった。笑えるようになって良かった。



ふと思う。南では親を失い、苦しんでいる子が居る。一人や二人では無い。数えられないくらい居るんだ。飢えや寒さに苦しめられ、死にかけている子が。



全ての子は守れなくても、出来る限り多くの子を救おう。引き取れない子は、慈しみ育ててくれる人に託す。


死を願う子を一人でも減らす事が、残されたオレたちの務めだから。


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