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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
光芒編
822/1585

9-34 打って付け


やまとおにとき和山社なぎやまのやしろに戻り為さるなり大蛇神おろちのかみ、和山三嶺の神で在らせられる烏神、狗神、鼠神を御呼び遊ばしおっしゃった。『大蛇社おろちのやしろへ』と。



三柱は御気付き遊ばす。化け王から闇喰らいの品について、良くない事が知らされたのだと。


隠の世から人の世、それも大蛇社まで行く。というコトは、アレらの品に心が宿ったか。



悪いカンは当たるもの。


闇喰らいの品は闇で満たされると、おのを持つ事が分かった。それダケでは無い。闇喰らい、叢闇むややみの品は他にも有る。


化け王の才を以てしても、消して無くす事は出来ないのだ。



「今やまとに有る叢闇の品はつるぎ、鏡、珠の三つ。」


大蛇の目が光った。


「それらが呼び合い、合わされば。」


恐る恐る、狗神。


「やまとが闇に呑まれると。」


鼠神、真っ青。


「叢とは集める、群がる事を表す。というコトは。」


烏神、ガクガクぶるぶる。


「そうなる前に急ぎ、神倉ほくらへ。」


蛇神のおおせに三柱、黙って頷き為さった。






自我を持った叢闇の品に聞かれるとマズイので急遽、和山社から霧雲山、祝社はふりのやしろに移動。神議かむはかりが終わるまで、おにもりが管理と警備を担当する。



人の守は山守社やまもりのやしろの祝に気取られぬよう、いただきの泉に祈りを捧げた。清めの儀が執り行われる間、平良ひらの烏が頂を囲む。


もしさまたげられれば水が抜け、霧雲山が崩れ壊れると言われている。




山守の祝は言い付けを破り、崖を越えようとして絶叫。


山守の地を一歩でも出れば、山越烏にアチコチつつかれる。『この崖を越えてはイケマセン』と。


異変に気付いた社の司に引き摺られ、縛られてひとやに放り込まれるのがオチ。つまり山守の祝を獄に入れれば、祝辺はふりべは安泰。



社の司に『放り込んでクダサイ』なんて、頼みたくても頼めない。だから祈るのだ。いつ祈るのか、どれくらい祈るのかナド、決まっていない。


決める気も無い。






和山社へ御戻り遊ばし、隠の神議りが始まった。



人の世で作られた品だ、隠の世では無く人の世に置く。闇を遠ざけるため、大貝神おおかいのかみの使わしめ土の糸で包む。ココまでは良い。


それを納める神倉を、ドコに建てるか。



大蛇は覚えていた。叢闇剣むらやみのつるぎの扱いについて、議った時の事を。


馬神が『耶万やまの大穴と同じモノが、他にも?』と問われ、鼠神がボソッと一言。『小さいのなら、ある』と確かにおっしゃった事を。



「鼠神。前に耶万の大穴と同じモノが、他にも有ると。」


「はい。使い隠が見つけ、幾つか押さえて居ります。」



一つは一山いちのやまにある、雫湖しずくのみずうみの底に開いていた穴。もう一つは蛇谷社へびたにのやしろがあった地の、真下に開いていた小さな穴。いづれも根の国からしか入れない。


他にも有るが、中つ国からも入れると判った。そんな所に納められない。だから話し合いの末、決まる。雫湖の底に鏡、蛇谷の地に珠を納める事に。



「万が一に備え、見せかけたモノも作ろう。」


大蛇は恐れた。『根の国からしか入れない』が、『根の国からは入れる』のだ。いつか悪しきモノが手に入れ、わざわいもたらすかもしれない。


「では、吹出山の頂に。」



小ぶりな山が三つ連なっている、吹出山には社が無い。ふもとに在るのだ。しかも社憑きは、妖怪の黒狼。


吹出山は黄泉平坂よもつひらさかに繋がっており、人の世の外れには獄も。『見せかけ』を建てるには打って付け!


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