5-9 お山の大将
何を、どうすれば、ここまで歪むのか。子の家は、学び所だ。
十二になれば、試み村へ行く。それまでに、身につけなければならない。生きる術を。なのに、この二人。何もしない。する気がない。
「私たちは、選ばれた子なのよ。」
「何を言っているんだ。」
「だって、乱雲山に来たのよ。選ばれたって、ことでしょう。アンタたちとは違うのよ。」
「違うも何も。人ごとき、何を言う。」
雲井社、忍び狐コン。思わず罵り、姿を消した。
「あぁ、疲れた。」
「何だい、コン。荒れているじゃないか。」
「聞いてくれよ、キラ。」
「オウ、言ってみろ。」
開いた口が塞がらない。選ばれるわけ、ないだろう。人のくせに。そもそも、乱雲山に来る子らは、捨てられた子だ。そうでなければ、行くあてがない子だ。
日吉社の祝から、いっぱいで受け入れられないと。釜戸山では、育てられないからと。あっちこっち頼み込んで、それでも断られた子だから。
釜戸社の祝から、雲井社の祝へ。どうか、どうかと頼み込まれて、やっと救われた子だ。
「あの二人だろう。」
「セイとヒサ。」
「あそこまで歪むと、幸せになれないだろう。」
「そうだな。社で下働きってのも、なぁ。」
「ない! フクが認めない。」
「それも、そうか。」
狐と烏に罵られているとも知らず、のさばる二人の娘。子の家は、荒れていた。
「ちょっと! まだなの。遅すぎない?」
「いつまで待たせる気?」
幼子が数人、目に涙をためている。
「止めろ。小さい子を虐めて、楽しいか。」
「何よ、ダイ。アンタ、こういう子が好きなわけ?」
「好きだよ。割り当てを果たしたうえで、オマエらの分まで担う。働き者じゃないか。」
「なっ、なんですって。私が怠けているとでも?」
「わかってるなら、働けよ。」
大荒れである。言うまでもなく、ダイが正しい。セイもヒサも、性根が腐っている。
「何を騒いでいるの。」
「サエさま。こんばんは。」
涼しい顔して、ご挨拶。
「こんばんは。で、何があったの、ダイ。」
「いつも通り。小さい子に丸投げして、いびったんだ。コイツら、追い出してよ。」




