9-30 そんなに気になるのかい?
アンリエヌの入国審査は厳格であると広く、広く知られている。それでも密入国者が絶たない。その全てが輸出入貨物の審査で発見され、強制送還されるのに。
「才を使うか。」
このままでは、税関で働く者が倒れてしまう。亡命したければ入国の際、申告すれば良いものを。認めるとは限らぬが。
「いや、作り出そう。」
誰でも安全に操作でき、量産可能な品を。
アンリエヌで産出する物を使って売り出せば、潤うだろう。皆、優秀だからな。どんな物が出来るのか、とても楽しみだ。
アンリエヌの民を殺害した、他国の犯罪者がいた。捕縛後、問答無用で斬首。骸は獣に食わせ、首を叩き付けるように返還。
国際問題にならなかったのは、ソレが重犯罪者の首だったから。
招かれ訪れた、旅券を所持する民を殺したのだ。殺害理由は、アンリエヌの旅券を奪うため。
護衛を付けていたが、部屋の外に居た。女性が着替えるのだ、気を遣うのは当たり前。小さな物音に気づき、踏み込んだ時にはもう・・・・・・。
アンリエヌの民に危害を加えれば、必ず殺される。周知徹底を図り、再発防止には成功。その代わりに増えた。
ヤツらの狙いは密入国し、アンリエヌで子を作る事。保護者として労働・永住許可証を得ようと考えている。
発行するワケが無い。
そのような事態が発生した場合、去勢した上で拷問し、惨殺する。そこに愛があったとしても決して見逃さない。生まれた子は親から奪い、孤児院に入れる。
子に罪は無い。よって成人後、『両親は死んだ』と伝える。
職業選択の自由を与えるが、公務員にはナレナイ。但し、当人のみ。次代は犯罪を犯さぬ限り、能力があれば公務員になれる。
「カー様。旧王城より、宰相の使いが参りました。『御目通りを』との事。」
「先触れもなく、か。ブラン、悪いが頼む。」
「はい。ゆっくり、お休みください。」
ニコッ。
「ありがとう。」
耶万の神倉に納められた、闇が群がる品を見たワケでは無い。なぜだろう、胸がザワザワする。霧雲山、若しくは霧雲山の統べる地に禍を。
エン、そんなに気になるのかい?
私は化け王、神では無い。
『はじまりの一族』や『新たな一族』、人の手で生み出された品なら破壊できる。しかし他は。魔物にもイロイロ居てね、特別な品は手に負えないよ。
「読むか。」
エンの頼みだ。『道を示す』くらいの事はしよう。これから何が起きるのか、知ろうじゃないか。先ずはアンリエヌ、序にやまと。
寝台に横たわり、目を閉じた。予知の才を呼び出し、映し出す。あらゆる事を。
「・・・・・・困った。」
叢闇鏡と叢闇珠。化け王に御頼みしようにも、伝が無い。鳥の谷に在る崖の洞を調べたが、羽の一本すら無く。
「おりょち?」
愛し子マルに見つめられ、ニッコリ。
幾ら『はじまりの隠神』で在らせられても、相手はアンリエヌ国のカー化け王。使いを出そうにも、アンリエヌが何処に在るのかサッパリ。
もう、お手上げ。