9-28 一族を代表して
いろいろ企んでいるのは知っていた。抜け出した事だって、一度や二度では無い。狙いが己だったので、見逃したダケ。
『はじまりの一族』が絶滅するのは仕方ない。とはいえ、殺せば一人きり。だから条件付きで、兄姉を不死にしたのだ。
旧王城の地下に幽閉したが、牢に入れたワケでは無い。
不仲でも親族。王族として優遇したし、名誉職も与えた。民を守るため王座を奪ったが、改心すれば譲位しようと準備していたのに。
「王位継承権を剥奪されたとはいえ、はじまりの一族。それも王族。才は無くても力は有る。よって血を抜き、エドは逆さにして壁に生き埋め。ジャドとウィも同様、柱に埋め込む。離れるが旧王城の中、案ずるな。」
ベンと違って他の三人は、その血を使わせなかった。だから処刑せず、厳罰に処する。才を奪われた王族は、日に当たらない限り死なない。
つまり刑は何百何千、何万年と続く。
「いっそ殺せ!」
エドが叫ぶ。
「死なせませんよ。生きて、罪を償ってください。」
スッと手で空を切る。三人の首が飛び、ブシュゥと吹き出した。一滴残らず凍結乾燥、隔離収納。首に頭を乗せると、シュルシュル音を立てながら結合。
傷跡は残ったが、そんなに目立たない。
ポンと出てきた棺に入れられ、エドが叫ぶ。抵抗むなしく釘付けされ、壁に塗り込められた。ジャドとウィは一人づつ布で巻かれ、別の柱に塗り込められる。
どんなに叫んでも聞こえない。
一部始終を見せられた新たな一族は、化け王に平伏す。
旧王城から追い出されれば、生きてゆけない。安全が保障されている地下施設など、他に無いのだから。
埋められたとはいえ、王族は生きている。妙な考えを起こさなければ、看守として置いてもらえると考えた。
「数が多いようだが。」
・・・・・・減らせと、仰るのか。
「これまで通り獣を差し入れる。が、量は減らす。」
王族の分が不要となれば、減らされるのは当然。
残された我らは、どうなる。外に出れば殺され、中に居れば飢え死ぬのか。そんな事は受け入れられない。
「恐れながら申し上げます。」
宰相、フリツが前に出た。
「許す、申せ。」
「これまで通り獣を頂けるとの事。新たな一族を代表して、厚く御礼申し上げます。」
深深と頭を下げたまま、動かない。
「遠慮は要らぬ、申せ。何が望みだ。」
ゆっくり顔を上げ、二コリ。
「地下で暮らす民が飢えずに暮らせるだけ、物資を賜りたく。」
必要最低限で良いので、継続して配給を。外部調達が出来ない以上、自給するか配給に頼るより他ありません。自給率を上げようにも、地下では。
新たな一族もアンリエヌの民。定められた法を遵守し、誠実かつ勤勉に働けば身の安全と、不自由の無い暮らしが保障されるハズ。
地上で暮らす民や、化け王城の魔物と同じ扱いなど、決して求めません。ですから旧王城の魔物にも、生存権を。
「良かろう。但し今より、産む子は一人。時をかけ数を減らせ。旧王城の地下を出る事、固く禁ずる。例外は無い。アンリエヌの法を遵守せよ。」
「ハッ。これより我ら新たな一族、化け王に忠誠を誓います。」
宰相が胸に手を当て、膝をつく。




