9-20 仕様が無いなぁ
跳ねる闇喰らいの剣を祓い、集めた闇を持ち込んだ壺に入れる。キュキュッと蓋をして、糸袋にポンッ。
「大貝神! 大事です。起きてください。」
グワングワン揺すられ、クワッ。
「分かった、起きる。」
長い付き合いだ。狸寝入りは通用しない。
「で、何だ。」
・・・・・・エッ、何それコワイ。
闇喰らいの剣が跳ねた? 抜いた闇がコレって、うわぁ。壺に入れ蓋をしても、ハッキリと解る禍禍しさ。
「閉ざされているが、隠の世。和山社へ急ぎ、御知らせしよう。土、輿に乗って行きなさい。」
「はい。」
この闇、清めようと思えば清められる。けれど隠神に託す。
土に持たせるのは嫌だが、輿でなら障り無い。どんなに愚かでも、神輿にドウコウしようとは思わぬ。傷一つでも付ければ、直ぐに清めるからな。
「困った事になった。この闇、濃すぎる。」
調べなくても判った。闇喰らいの剣から採取された闇、ドロドロのギトギト。
「この濃さ、清められるとすれば。」
言い難そうに蛇神を見つめ為さり、ニッコリ。
強い清めと、守りの力を生まれ持つ祝。つまり大蛇神の愛し子、マルに頼めば良い。
けれど『良村の祝に』なんて、『愛し子に任せましょう』なんて言えないよ。となれば、もう笑うしか。
ニッコリニコニコ。察して、お願い。
「朝餉を食べ、お片づけしたら話す。」
一同、ホッ。
「蝙蝠神、叢闇鏡は。」
「日が落ちて直ぐ、引き寄せられるように儺国へ。」
「牛神、叢闇珠は。」
「日が落ちて直ぐ、引き寄せられるように儺国へ。」
日が落ちて直ぐ、儺国で何かが起きた。その前に考えなければ。鮐神より知らせ告げられた、あの事を。
化け王の許し無く、アンリエヌを出た生き物。『新たな一族』は闇に生き、光を忌み嫌う。その残りがアンリエヌに戻ろうと、西へ進む。
対国から入ったのも、『新たな一族』の残り。三つが儺国で一つになって、闇を。いや妖怪に食われたか、取り込んで暴れたのだろう。
「闇喰らいの品を壊そう。剣から抜いた闇は、愛し子マルに任せる。あの子は幼い。剣でも鏡でも珠でも、品に触れ壊すには早過ぎる。よって叢闇鏡、叢闇珠を人の世。大国主神に清め滅ぼすよう、御勧めしようと思う。」
「稻羽ぁ、帰ってキテェェ。」
絶叫なさる大国主神。使い兎たち、溜息。
「因幡へ帰らせて頂きます。」
戻って早早、激務の予感。この手のカンって当たるんだよネ。クルッ。
「待て、お待ちください。」
嫌です。・・・・・・捨てられた仔犬のような目で、兎を見ないでクダサイ。
大国主神、お忘れですか。『大いなる国の主』で在らせられるのです。胸を張って、大祓の儀を執り行いましょう。ネッ。
「稻羽が支えてくれるなら、務められるような気がする。」
可愛く仰っても、稻羽? あらぁ、引き受けるのね。